2020 Fiscal Year Research-status Report
新規脳波バイオマーカーを用いた機械学習によるてんかんの診断手法の開発
Project/Area Number |
19K07964
|
Research Institution | International University of Health and Welfare |
Principal Investigator |
上原 平 国際医療福祉大学, 国際医療福祉大学成田病院, 准教授 (30631585)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
重藤 寛史 九州大学, 医学研究院, 教授 (50335965)
迎 伸孝 九州大学, 大学病院, 助教 (60532843)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | てんかん / 脳波 |
Outline of Annual Research Achievements |
脳波で観察されるてんかん性放電は、てんかんの診断において重要である。しかし、その同定はしばしば困難であり、過剰判読や見逃しが多い。様々な自動検出の方法が提案されているが、習熟した脳波判読者のレベルには達していないのが現状である。近年、てんかん性放電は、てんかん焦点から離れた領域にも、広範囲に脳波変化を引き起こすことが指摘されてきている。本研究では、この点に着目し、てんかん性放電の遠隔効果を複数探索し、それらを組み合わせることで、客観的な診断手法を開発することを目指している。 本年度は、てんかん外科手術の術前検査の一環として記録された、難治性焦点てんかん患者の頭蓋内脳波と頭皮上脳波記録を用いて、てんかん性放電の遠隔効果の解析を行なった。てんかん性放電の遠隔伝播を詳細に解析し、その空間的パターンが機能的ネットワークと類似していることを明らかにした。脳内の生理的ネットワークに対する干渉が遠隔効果として現れていることが示唆された。ノンレム睡眠中には、睡眠紡錘波(12-16 Hz)が徐波振動(0.5-1 Hz)の特定の位相に集中して出現する。この異なる周波数の神経振動間の連関は、睡眠中のエピソード記憶の固定化に重要と考えられている。てんかん患者では、記憶の固定化が障害されることが知られているため、てんかん性放電がこの連関を障害するのではないかと考えた。そこで、phase-locking value法を用いて、睡眠紡錘波と徐波振動の連関を定量的に評価したところ、てんかん性放電出現直後に低下していることが判明し、この変化は頭皮上脳波でも観察された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
難治性てんかん患者の頭蓋内脳波記録を用いた遠隔効果の解析と並行して、健常者とてんかん患者の頭皮上脳波のデータベースを作成する予定であったが、新型コロナウイルスの流行による社会情勢の変化のため困難であった。
|
Strategy for Future Research Activity |
てんかん患者の頭蓋内脳波と頭皮上脳波の解析をさらに進展し、てんかん性放電に伴う遠隔効果としての脳波変化を複数抽出し、そららの指標を作成する。てんかん患者と健常者の脳波を多数収集し、作成した複数の指標を特徴量として、機械学習によっててんかんの脳波と非てんかんの脳波を判別する手法を開発する。社会情勢から健常者の脳波を新たに収集することが困難な場合は、代わりに非てんかんの神経疾患の脳波を用いることも検討する。
|
Causes of Carryover |
大規模な脳波データベースの構築とそれを用いた解析を予定しているが、新型コロナウイルス感染症の流行に伴う社会情勢の変化により準備が遅れている。ストレージ などの関連物品や人件費・謝金に、次年度使用額が生じた。今年度に行う予定であったデータ収集と解析を次年度に行う。
|