2019 Fiscal Year Research-status Report
髄鞘形成期の変異αシヌクレイン発現による世界初の一次進行型多発性硬化症モデル開発
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19K07976
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
山口 浩雄 九州大学, 大学病院, 特任講師 (00701830)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
雑賀 徹 九州大学, 医学研究院, 共同研究員 (00744880) [Withdrawn]
松瀬 大 九州大学, 医学研究院, 助教 (70596395)
山崎 亮 九州大学, 医学研究院, 准教授 (10467946)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | αシヌクレイン / 一次進行型多発性硬化症 / 多系統萎縮症 |
Outline of Annual Research Achievements |
私たちは、中枢神経髄鞘形成期までのオリゴデンドログリアに、様々な原因により異常を起こすことが一次性進行型MS(primary progressive MS, PPMS)の発症の鍵となると考え、遺伝性パーキンソン病の原因蛋白質で凝集性と細胞毒性の強いヒト変異α-シヌクレイン(α-SynA53T)を、Tet-offシステムを用いて生後3週齢の髄鞘形成期からオリゴデンドログリア特異的に発現させるモデルマウスを作成した。これらのマウスは、単麻痺/片麻痺/対麻痺等の運動麻痺が約70%と高い頻度でみられ、また小脳失調もみられた。病理学的に大脳や脳幹にリン酸化α-シヌクレイン(p-α-Syn)の蓄積に一致して卵円形や線形の局所性脱髄が出現することを見出した。さらに、p-α-Synの蓄積部位では、arginase-1陽性ミクログリア、アストロサイトに発現するコネキシン(Cx)、Cx43/Cx30の脱落を認め、その一部に局所的な脱髄斑が観察された。 神経変性疾患である多系統萎縮症(MSA)と多発性硬化症で、神経炎症やオリゴデンドロサイト脱落、脱髄、ミクログリア活性化など共通点が指摘されている。Tet-off システムを用い、オリゴデンドログリア特異的に、α-SynA53Tを8週齢以降に発現させると、平均22週齢で発症し、症状は失調歩行のほか、尾や後肢の麻痺、寡動などがみられ、これらマウスはMSAのモデルになることを見出した。病理学的にはp-αSynの沈着や脱髄所見が大脳、小脳、脳幹、脊髄にみられ、それに伴いarginase-1陽性ミクログリアの顕著な浸潤やアストロサイトのCx43/30の広汎な脱落を認めた。また神経細胞脱落も認めた。これらのことは、arginase-1陽性ミクログリアやアストロサイトのコネキシン脱落などのグリア炎症が脱髄病変の形成、神経細胞脱落に関わっていることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
PPMSモデルマウスの神経症状、病理学的所見を明らかにでき、オリゴデンドログリア特異的ヒト変異α-シヌクレイン(α-SynA53T)の発現時期を変えることにより、多発性硬化症と共通点が見られる神経変性疾患である多系統萎縮症(MSA)のモデルマウスを作成、両者の神経症状、病理学的所見を比較することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
PPMSモデルマウスの神経症状、病理学的所見をさらに解析し、脱髄のメカニズムを明らかにしてゆく。さらに多系統萎縮症(MSA)のモデルマウスと神経症状、病理学的所見を比較することにより、共通点、相違点を明らかにし治療法を見出してゆく。
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Causes of Carryover |
実支出額の累計額が所用額を下回ったため。 今後の研究計画である以下の事項に使用する。 PPMSモデルマウスの神経症状、病理学的所見をさらに解析し、脱髄のメカニズムを明らかにしてゆく。さらに多系統萎縮症(MSA)のモデルマウスと神経症状、病理学的所見を比較することにより、共通点、相違点を明らかにし治療法を見出してゆく。
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Research Products
(5 results)