2020 Fiscal Year Research-status Report
ヒト脳オルガノイドを用いた神経変性疾患を引き起こすリピート病の病態解析
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19K07978
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Research Institution | Nara Medical University |
Principal Investigator |
桐山 敬生 奈良県立医科大学, 医学部, 講師 (80571025)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
杉江 和馬 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (60347549)
松井 健 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (90528605)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 脳オルガノイド / RAN translation / ALS / FUS / DNA修復 |
Outline of Annual Research Achievements |
脳オルガノイドの特性を解析するとともに、非翻訳領域のリピート病を中心にALSや脊髄小脳変性症などの神経変性疾患の分子病態メカニズムの解析研究を行っている。 ヒトiPS細胞から脳幹細胞成分を含む脳幹オルガノイドを作製し、メラニン含有細胞の存在と、脳幹への発生発達過程におけるneural crest cellに重要なSOX9の発現、中脳を含む前脳構造の発達に重要な神経幹/前駆細胞マーカーであるSOX2、ASCL1、SLC1A3、OTX2の発現、ドーパミン作動性ニューロンへの誘導に働くFOXA2の発現を免疫組織染色で確認した。さらにオルガノイドの低酸素・低栄養状態(oxygen glucose deprivation /reoxygenation:OGD/R)におけるストレス下での変化をトランスクリプトーム解析やリアルタイムPCR法による遺伝子発現解析を行った。 また、ALSの原因遺伝子であるC9orf72遺伝子の繰返し配列((GGGGCC)n)異常を伴うALS/FTDの患者ではrepeat-associated non-ATG translation(RAN翻訳)によって複数の細胞毒性ポリペプチドが産生されることが考えられているが、DNA損傷がおこった際にポリペプチドがDNA修復機構へどのように影響するかを検討した。ALSの原因遺伝子であり、RNA binding proteinとしてDNA修復にも関与するFUSの細胞内の動きを可視化し、共焦点顕微鏡を用いたlaser micro-irradiation法により、GFP融合FUSの発現した細胞の核内にDNA損傷(double strand break)を起こした。さらに合成したPR(プロリン・アルギニン)ポリペプチドを培養液中に加え、その有無により経時的なGFP融合FUSのDNA損傷部位への集積の変化を捉えた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
iPS細胞から脳オルガノイドの樹立し解析し、脳幹オルガノイドとしての特性を明らかにして報告した。患者由来iPS細胞からの脳オルガノイドは患者iPS細胞樹立、品質評価に時間がかかったため、健常者由来のiPS細胞を用いて作成した脳オルガノイドを用い、OGD/Rによるストレス下での変化を、トランスクリプトーム解析やリアルタイムPCR法により遺伝子発現解析をおこなった。OGD/Rへの反応として pyruvate kinase isoform M2 (PKM2) の発現上昇が見られ、さらにマウスの皮質細胞も用いたOGD/Rの変化の解析も行った。 また、非翻訳領域リピートからRAN翻訳により生じるとされるポリペプチドと、FUSとの関係の解析については、laser micro-irradiation法を用いて、GFP融合FUSの発現した細胞の核内にDNA損傷を起こし、経時的なGFP融合FUSのDNA損傷部位への集積の変化を捉えることができた。DNA損傷後のFUSの集積は3分以内に始まり、6~25分でGFP融合FUSは褪色していくものが多いが、一部の細胞では1時間以上集積が続くものも見られた。照射後3時間経過すると核内にFUSを含んだ凝集物aggregationが見られた。また、PRポリペプチドを培養液中に加え、ポリペプチド存在下でも同様のDNA損傷とその修復が起こるかも検討し、リピート病によるポリペプチド毒性とALSに関連遺伝子FUSについての解析を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
OGD/Rを用いたストレス下での脳オルガノイドの解析をおこなったが、リピート病のRAN翻訳による毒性ポリペプチドの存在下でのFUSのDNA損傷修復機能の異常、PARPやRNAを含むRNA binding proteinによる修復蛋白の働き、細胞構造への影響、ポリペプチドがFUSの核内移行に及ぼす原因についても解析を行い興味深いデータが得られつつあり、さらにポリペプチドとALS関連遺伝子との関係を調べ報告する予定である。
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Causes of Carryover |
本年度使用予定であった試薬の納入時期を遅らせたため、繰越金が発生した。次年度で使用する予定である。
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