2019 Fiscal Year Research-status Report
ミクログリア神経疾患関連遺伝子を制御するRNA結合タンパク質
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19K07982
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Research Institution | Meiji Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
紀 嘉浩 明治薬科大学, 薬学部, 准教授 (80415140)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ミクログリア / アルツハイマー病 / TREM2 / スプライシング / RNA結合タンパク質 |
Outline of Annual Research Achievements |
ミクログリアは脳の免疫担当細胞であり、神経疾患での役割が注目されている。特に、アルツハイマー病では、ミクログリア関連遺伝子が遺伝的リスク因子として多数同定されている。ミクログリアは周辺環境に応じてその性質(極性)を変化させ、それに伴い遺伝子発現プロファイルも変化する。申請者は、このようなミクログリアの遺伝子発現制御プログラムには転写因子だけでなく、RNAプロセシングの段階での制御も関わっていると仮説を立てた。しかし、現状ではミクログリアの機能や性質に関わるRNAプロセシング制御因子については知見が乏しい。本研究では、特にアルツハイマー病リスク遺伝子等のミクログリア機能に関わる重要遺伝子群に注目し、それらのRNAプロセシング制御を担うタンパク質の同定を試みる。初年度は、TREM2遺伝子エキソン3の選択的スプライシング制御因子を探索した。TREM2はミクログリアの細胞膜に存在するタンパク質であり、神経変性疾患でのミクログリアの性状変化の鍵因子の一つと考えられている。我々は以前に、エキソン3の選択的スプライシングにより、TREM2のタンパク質発現が増減することを報告している。初年度は、一群のRNA結合タンパク質を用いたスクリーニングから、TREM2エキソン3のスプライシング制御因子を同定した。興味深いことに、このエキソンの選択的スプライシングはヒトとマウスで異なることが明らかとなった。即ち、TREM2の発現制御には種特異性が存在する。また、この制御因子がTREM2のイントロン3を介して制御することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画通り、初年度ではTREM2遺伝子の発現制御に関わるRNA結合タンパク質の特定を達成した。また、その他のアルツハイマー病リスク遺伝子に関しても、制御因子の探索に着手した。さらに、siRNAライブラリーを構築し、実験での利用を開始した。なお、本年度の研究遂行は大学からの予算で大部分を賄うことができ、また、次年度に研究補助者の人件費が大きくかかることが予想されたため、予算執行を抑制した。年度末の新型コロナの影響で一部の実験を次年度に延期したことも支出の減少に繋がった。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、TREM2遺伝子の他に、CD33、PTK2B、TYROBPなどの制御因子を探索しているところである。これらのうち、複数の遺伝子の制御に関わるものを選別し、ミクログリアでの詳細な役割の検討に進みたい。
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Causes of Carryover |
本年度の研究は、大学からの資金で大部分が賄うことができた。新型コロナの影響で年度末の一部の実験を次年度に延期したことも支出の減少に繋がった。また、次年度に疾患モデルマウスの飼育・実験のため研究補助員の人件費が大きくかかることが予想されたため、初年度の支出を抑制し、次年度に使用する計画とした。
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