2020 Fiscal Year Research-status Report
アストロサイトの部位特異性に基づくα-シヌクレイン動態および神経障害機構の解明
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19K07993
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
宮崎 育子 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 講師 (40335633)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
浅沼 幹人 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 教授 (00273970)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | パーキンソン病 / ロテノン / ドパミン神経細胞 / 腸管神経系 / α-シヌクレイン |
Outline of Annual Research Achievements |
低用量ロテノン慢性皮下投与パーキンソン病モデルマウスでの中枢・末梢神経系における神経障害およびα-シヌクレイン (α-syn)発現について検討した.雄性C57BL/6Jマウス(8週齢)に低用量ロテノン(2.5 mg/kg/day)を浸透圧ミニポンプを用いて4週間慢性皮下投与を行い,黒質,延髄および腸管の切片を作製し,神経細胞マーカー(チロシン水酸化酵素,コリンアセチルトランスフェラーゼ,β-tubulin III)とα-synの二重染色を行った.また,オープンフィールドテスト,ロータロッドテスト,シリンダーテストによる運動機能評価および腸管機能評価を行った.ロテノン投与マウスでは,黒質のドパミン神経細胞,延髄迷走神経背側運動核でのコリン作動性神経細胞,腸管アウエルバッハ神経叢の変性脱落とα-synの発現誘導がみられた.また,これらの部位におけるα-syn発現は残存する神経細胞でみとめられた.さらに,ロテノン投与マウスは,オープンフィールドテストによる自発運動量測定,ロータロッドテストによる協調運動評価,シリンダーテストによる四肢の機能評価の全てにおいて有意な低下を示し,糞便排泄評価において腸管機能障害もみられた. 以上の結果より,低用量ロテノン慢性皮下投与マウスでは,中枢神経系のみならず末梢の腸管神経系においてもα-syn発現誘導をともなった神経変性が惹起されることが明らかとなった.ロテノン投与マウスの延髄舌下神経核ではα-syn発現誘導はみられたが,コリン作動性神経の脱落はみられなかったことから,ロテノン誘発神経障害にはα-syn発現誘導の他に部位特異的神経障害メカニズムが関与すると考えられる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
低用量ロテノン慢性皮下投与パーキンソン病モデルマウスでの中枢・末梢神経系における神経障害およびα-syn発現について検討し,ロテノン投与マウスでは,中枢神経系のみならず末梢の腸管神経系においてもα-syn発現誘導をともなった神経変性が惹起されることが明らかとなった.また,ロテノン投与マウスの延髄舌下神経核ではα-syn発現誘導はみられたが,コリン作動性神経の脱落はみられなかったことから,ロテノン誘発神経障害にはα-syn発現誘導の他に部位特異的神経障害メカニズムが関与すると考えられた.これまでの培養細胞を用いた検討により,ロテノン処置した中脳グリア細胞培養液添加によるドパミン神経特異的神経障害にはドパミン神経細胞内α-syn発現に加え他の要因も関与することが示唆されており,本年度のロテノン投与マウスでの検討結果はこれまでの知見を裏付けるものであった. これらの結果を踏まえ,次年度はロテノン処置により中脳グリア細胞培養液中に分泌される分子の網羅的検討を行い,ロテノン誘発部位特異的神経障害を惹起しうる分子の同定へと発展させることができる.
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Strategy for Future Research Activity |
線条体および中脳グリア細胞培養液およびロテノン処置により培養液中に分泌される分子の網羅的検討を行い,ロテノン誘発ドパミン神経特異的神経障害を惹起しうる分子の同定を行う.また,ロテノン慢性皮下投与パーキンソン病モデルマウスの脳および腸管の組織切片を用いて,同定した分子の免疫染色を行い,中枢・末梢神経系における発現動態ならびにロテノン暴露による発現変化を検討する.さらに,アストロサイト-ミクログリア連関およびこれらグリア細胞の相互作用が神経細胞におけるα-syn発現にもたらす影響についても検討し,ロテノン誘発部位特異的神経障害機構の解明を目指す.
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Causes of Carryover |
本年度はロテノンを充填した浸透圧ミニポンプをマウス皮下に移植した動物実験を行い,効率よく実験結果を得ることができた.そのため,動物実験に必要として計上していた経費の一部にあたる3,645円を次年度に使用することとなった.次年度の請求研究費と合わせて,培養実験,動物実験のための消耗品費として使用する予定である.
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[Presentation] Region-specific glial dysfunction promotes rotenone neurotoxicity.2020
Author(s)
Miyazaki, I., Kikuoka, R., Isooka, N., Sogawa, C., Sogawa, N, Kitamura, Y., Asanuma, M.
Organizer
第61回日本神経学会学術大会
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