2020 Fiscal Year Research-status Report
多系統萎縮症の脳内αシヌクレイン異常凝集に対する腸内細菌叢の関与の解明
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19K08001
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Research Institution | Iwate Medical University |
Principal Investigator |
前田 哲也 岩手医科大学, 医学部, 教授 (70359496)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大野 欽司 名古屋大学, 医学系研究科, 教授 (80397455)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 多系統萎縮症 / 腸内細菌叢 |
Outline of Annual Research Achievements |
パーキンソン病(PD)と多系統萎縮症(MSA)は共に神経細胞のαシヌクレイン異常凝集を特徴とする。PDではαシヌクレイン病理が消化管神経叢から迷走神経を通じて脳へと進展することから発症には腸内細菌叢が関与することが世界的にも多く報告されている。一方、MSAもまた自律神経障害が必発で消化管疾患として便秘を高頻度に合併する。しかし腸内細菌叢に関する研究は世界的にも極めて少ない。本研究はMSAで腸内細菌叢の組成分析と臨床経過との関連性を検討し病態の解明及び進行抑制療法の開発を最終目標とする。2019年度からMSA患者を登録開始した。2020年度は引き続き、年齢、性別などの臨床情報を取得し、unified MSA rating scaleを用いて臨床重症度を評価した。パーキンソン優位型と運動失調優位型の区別をした。また健常対照として食生活が共有されている配偶者あるいはその他の同居親族を登録した。2020年度は5組のMSA症例とその配偶者に同意を得て登録することができた。プロトコールに従い自宅で採取した便検体は直接、分析担当の分担研究者に郵送した。次世代シークエンサーを用いた16S解析を行い、Qiime2を用いて菌組成を解析した。予測メタゲノム解析にはPICRUSt1.1.2やPiphillin serverなどを用いて行い、対照と比較することで組成の違いを明らかにする予定であった。しかし症例登録の進捗状況に遅れが生じているため、現時点ではまだ実施に至っていない。症例登録期間を半年程度延長する予定として、次年度に全ての解析を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
2019年度から症例の登録を開始した。外来通院中のMSA患者を対象に本研究動員基準を満たす症例を抽出し、研究参加同意説明文章を用いて説明を行い同意を得た。臨床情報およびUMSARSを用いて対象症例の臨床背景を登録した。同様に健常対照として参加登録者の配偶者あるいはその他の同居親族を動員した。2019年度は想定していたMSA10例に同意を得て健常対照とともに登録した。しかし糞便採取の手数が参加者の研究遂行上の問題となり、3名が研究継続を辞退した。その同居健常対照も同時に辞退した。2020年度はCOVID-19感染症蔓延のため、年度初めから受診者が著しく減少し、電話診療が中心となったため参加同意を得ることが困難となった。やや情勢が落ち着いた秋頃から5例のMSAと対照者から検体が得られた。1組が同意後に辞退した。当初の計画より症例登録が遅れており2021年度は症例登録を継続しつつ可能な検体の解析を行う予定である。解析終了後に統計解析を行う。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は引き続き外来通院中のMSA患者のみならず、当科入院精査によりMSAと診断した症例にも参加同意の説明を拡大する。退院後に一定期間、家族と同一の食生活を共 有した症例も研究対象とし、本研究動員基準を満たす症例には研究参加を依頼してゆく方針である。電話診療の症例についても研究説明を電話で行い協力を得るよう努力する。倫理上の配慮は十分になされており、現行の体制のままで継続することが可能である。縦断的な検討は本研究の登録症例数を確保した後に開始する予定とし、登録症例にはその点も予め説明し検討していただくことで、登録症例のロスを防止したいと考えている。
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Causes of Carryover |
2020年度は当初からCOVID-19感染症蔓延のため病院への受診控えが著しく、電話診療が中心となったため、本研究への参加同意を得ることが困難となった。そのため、検体収集、配送などに予定していた経費を使用することが十分ではなかった。また参加予定としていた学会がリモート開催となり宿泊交通費が不要となった。従って2021年度に繰り越して、不足の症例登録を行い、腸内細菌を解析するため、これらの分をそれに充てることとした。
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