2020 Fiscal Year Research-status Report
HAMにおけるウイルス感染細胞に起因した中枢神経傷害分子機構の解明
Project/Area Number |
19K08004
|
Research Institution | St. Marianna University School of Medicine |
Principal Investigator |
新谷 奈津美 聖マリアンナ医科大学, 医学研究科, 助教 (80440353)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | HTLV-1 / HTLV-1関連脊髄症 / 中枢神経 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒトT細胞白血病ウイルス(HTLV-1)関連脊髄症(HAM)の主病態は、HTLV-1感染細胞に起因した脊髄の慢性炎症による神経傷害と変性であり、感染細胞の詳細な解析はHAM病態の理解及びその制御に必須である。これまでに我々はHTLV-1感染細胞による炎症の慢性化機構を明らかにし、さらに、炎症に起因する神経傷害メカニズムの解明を目指している。HTLV-1感染細胞を主に含むHAM患者CD4+T細胞におけるRepulsive Guidance Molecule a (RGMa)過剰発現の発見より、RGMaが有する炎症反応および神経傷害活性に着目し、本研究では、HTLV-1感染細胞に発現するRGMaを介したHAMの神経細胞傷害機構を究明し、HAM脊髄の神経傷害を標的とした新規治療法開発への基盤構築を目的とする。 令和2年度は、HAM感染細胞に起因する炎症反応におけるRGMaの関連性について解析を試みた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
HAMの脊髄病変では、HTLV-1感染T細胞が浸潤し、そこから産生されるIFN-γによってアストロサイトからのCXCL10産生を刺激し、そのCXCL10は炎症細胞の脊髄への遊走を促す。さらに、それらの細胞がIFN-γを産生してアストロサイトのCXCL10産生をさらに刺激するという炎症のポジティブフィードバックループが、HAMにおける炎症の慢性化機構の主軸と考えられている。 また、HAM患者末梢血単核細胞(HAM-PBMC)は培養により感染細胞の増殖とそれに対する免疫細胞の応答反応により自発的に増殖し、IFNγなどHAMに特徴的な炎症性サイトカインやCXCL10を過剰産生する。この現象はHAMの病態を反映する有用なモデルである。 このモデルに対する抗RGMa抗体の作用を検討した結果、自発増殖活性が有意に抑制された。また、その際、産生変化が認められるサイトカインについて解析した結果、抗RGMa抗体はCXCL10の産生を有意に抑制すると共に抗炎症性サイトカインであるIL-10産生を上昇させた。しかしながら、IFNγ、TNFα、IL-2の産生には変化は認められなかった。以上の結果から、感染細胞におけるRGMaの発現はHAMの炎症反応の増悪化に寄与することが明らかとなった。また、RGMaの発現はアストロサイトにも認められることから、HAMの炎症のポジティブフィードバックループにおいて重要な役割を担うCXCL10産生への関与も予想された。加えて、抗RGMa抗体はHAMの炎症を抑制する有効的な治療薬となり得ることが期待された。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後、HAMによる神経傷害におけるRGMaの関わりを明らかにするため、以下の解析を予定する。 (1)神経細胞への作用検討 これまでの解析から、HAMの神経傷害との関わりについて、我々は、HTLV-1に由来する機能タンパクであるTaxを一過性に発現誘導できるJPX9細胞(Jurkat細胞由来)やHAM-PBMCと神経細胞の共培養により神経損傷マーカであるニューロフィラメントの放出が有意に誘導されることを明らかにしている。そこで、以上の評価系を指標にRGMaの機能阻害または発現抑制により神経傷害作用が変化し得るか解析することでHAMによる神経傷害におけるRGMaの関連性を明らかにする。 (2)アストロサイトへの作用検討 HAM-PBMCとアストロサイトの共培養によりHAM-PBMCより過剰産生されるIFNγに応答してアストロサイトからCXCL10が誘導される。その反応におけるRGMaの関連性を明らかにするため、抗RGMa抗体処理によるRGMaの機能阻害によってアストロサイトからのCXCL10産生に変化が認められるか解析する。
|
Research Products
(7 results)
-
-
[Journal Article] Mortality and risk of progression to adult T-cell leukemia/lymphoma in HTLV-1-associated myelopathy/tropical spastic paraparesis.2020
Author(s)
Nagasaka M, Yamagishi M, Yagishita N, Araya N, Kobayashi S, Makiyama J, Kubokawa M, Yamauchi J, Hasegawa D, Coler-Reilly ALG, Tsutsumi S, Uemura Y, Arai A, Takata A, Inoue E, Hasegawa Y, Watanabe T, Suzuki Y, Uchimaru K, Sato T, Yamano Y.
-
Journal Title
Proc Natl Acad Sci U S A
Volume: 117(21)
Pages: 11685-11691
DOI
Peer Reviewed / Open Access
-
[Journal Article] Creation and validation of a bladder dysfunction symptom score for HTLV-1-associated myelopathy/tropical spastic paraparesis.2020
Author(s)
Yamakawa N, Yagishita N, Matsuo T, Yamauchi J, Ueno T, Inoue E, Takata A, Nagasaka M, Araya N, Hasegawa D, Coler-Reilly A, Tsutsumi S, Sato T, Araujo A, Casseb J, Gotuzzo E, Jacobson S, Martin F, Puccioni-Sohler M, Taylor GP, Yamano Y; Japan Clinical Research Group on HAM/TSP.
-
Journal Title
Orphanet J Rare Dis
Volume: 15(1)
Pages: 175
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
-
-
-
-