2021 Fiscal Year Annual Research Report
がんサバイバーの慢性疼痛に対する認知行動療法の施行と神経科学的基盤の解明
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19K08021
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
倉田 明子 広島大学, 病院(医), 講師 (30838769)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉野 敦雄 広島大学, 保健管理センター, 准教授 (90633727)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 慢性疼痛 / オンライン認知行動療法 / 治療同盟 / 破局視 / 注意機能 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年4月に広島大学臨床研究倫理委員会に承認を受け、オンラインでの慢性疼痛に関する認知行動療法(以下CBT)を慢性疼痛患者8名に対して実施した。脱落者はなく、有害事象も認めなかった。各患者に質問紙を治療前後で実施し比較した結果、痛みの破局的認知を示すPCS、治療同盟を示すWAI、総合的痛みの質的評価であるMPQ-2、健康関連QOL評価尺度のSF-36で身体の日常生活機能を示す部分で有意に治療後の改善が見られた。 以上より、オンラインでの慢性疼痛CBTでは、良好な治療同盟を通して痛みに対する破局的認知や総合的な痛み、身体的な日常生活機能が改善することが示唆された。 また、我々は慢性疼痛患者26名と健康コントロール28名に対してAttention Network Test-Revision(ANT-R)、安静時fMRIを測定した。その結果、慢性疼痛患者ではコントロール群に比べてANT-R下位分類のvalidityが延長し、反応が遅延していた。さらに安静時fMRIにおいて、慢性疼痛群ではコントロール群と比べて有意に左の島と左の前頭葉の結合性が低下し、その結合性はANT-R のvalidity effectと負の相関を示した。以上から、慢性疼痛患者における注意機能の障害と、左の島と前頭葉の機能結合性の低下の関連が示唆された。 事業期間全体として、我々は慢性疼痛患者に対するオンラインCBTの手順書を作成して方法を確立し、オンラインCBTにおける治療同盟を通じて痛みの認知やQOLの改善が得られることを突き止めた。また、安静時fMRIの研究では、慢性疼痛患者における脳の機能的結合性の変化が注意機能の低下に関連していることが示唆された。注意機能はCBTの治療効果に重要な影響を与えるため、今回得られた結果はCBTの神経科学的基盤解明の一端に寄与するものとなる。
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