2020 Fiscal Year Research-status Report
Neural basis of recovery of social cognitive impairment in mental disorder: significance of enhancing for synchronizer neurons
Project/Area Number |
19K08023
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Research Institution | Sapporo Medical University |
Principal Investigator |
鵜飼 渉 札幌医科大学, 医療人育成センター, 准教授 (40381256)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
橋本 恵理 札幌医科大学, 医学部, 准教授 (30301401)
石井 貴男 札幌医科大学, 医学部, 講師 (40404701)
木川 昌康 札幌医科大学, 医学部, 助教 (50581146) [Withdrawn]
豊島 学 国立研究開発法人理化学研究所, 脳神経科学研究センター, 研究員 (90582750) [Withdrawn]
森元 隆文 札幌医科大学, 保健医療学部, 講師 (60516730)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 統合失調症 / 社会性認知機能障害 / シンクロナイザーニューロン / GABA作動性インターニューロン / 幹細胞投与療法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,統合失調症治療の上で重要な課題である,職業的・社会的機能回復の問題について,大脳皮質神経回路における周期的神経活動 (オシレーション) 形成細胞 (シンクロナイザーニューロン) の変異による,脳機能変化 (行動中のgamma-band activity 変動),脳細胞由来血中因子変化 (L1CAM-Exosome 中の分子変動),および行動学的変化 (職業,対人,注意・記憶機能変動) を比較解析し,認知行動療法学的アプローチ (聴くこと・語ることを中心とした集団療法,メタ認知トレーニング) を介して生じる社会認知神経回路の修復・改善効果を明らかとすることである。 初年度は,胎生期にpoly (I:C)を曝露させる方法で統合失調症モデルラットを作成し,その社会性行動と脳内GABA作動性ニューロン機能変化に対する抗精神病薬の影響を調べ,臨床において,統合失調症患者の職業的,また社会的機能障害の改善効果が報告されているblonanserinの処置が,同モデルの社会性行動障害を回復させ,その効果に,海馬,および扁桃体領域でのparvalbumin陽性細胞数の増加が関係することを示した。今年度は,実験に用いた動物群の脳組織を用いて,上述した社会的認知機能基盤に関わる分子変動について,さらに詳細な解析を行い,GABA/Glutamate作動性ニューロンバランスの変化と,BDNF遺伝子発現変化が,薬物による行動異常改善効果に関わる可能性を見出し,報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では,特に,GABA作動性神経系発達が多大な影響を受けることが報告されている胎生期免疫ストレス誘発統合失調症モデル動物を作成し,臨床で社会認知機能の改善効果が報告されている統合失調症治療薬を投与した際の,脳神経機能,および脳内・血中exosome内の関連分子の変動解析を行い,社会性機能の病態について新たな知見を得ようとするものである。初年度は,解析に用いる病態モデル動物として,胎生期にpoly(I:C)を投与した統合失調症モデルラットを作成した。その上で,病態モデル群の一部には,種々の抗精神病薬を投与し,行動学的変化について,各群間で比較検討を実施するとともに,PV陽性GABA作動性ニューロン数の変動解析を行った。 今年度は,社会認知・共感性機能に関わる脳神経回路ループ(扁桃体→前部帯状回→後部帯状回→背側海馬→腹側海馬→扁桃体)の各領域における関連分子の同定とその変動の解析を進め,モデル動物に,blonaserinまたはhaloperidolを投与した群では,背側/腹側海馬,および扁桃体領域において,GABA作動性ニューロン関連遺伝子群(parvalbumin,Gad1/67,Vgat)が増加し,Glutamate作動性ニューロン関連遺伝子群(Grin1,Gs,Vglut)が有意に変動することを明らかとした。さらに,同領域での,興奮性/抑制性ニューロンバランスの変化,並びにBDNF遺伝子の発現変化を確認した。しかしながら,研究の遂行によって,これらの変化は,観察した3つの領域ごとに,また,blonanserinの投与量ごとに異なっていることも明らかとなり,今後,共感性機能を含め,他の行動学的変化の解析を加えて,さらに社会的認知機能の脳基盤回復に関わるメカニズム解明を進めていきたいと思っている。
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Strategy for Future Research Activity |
社会性機能,および関心脳領域における関連候補分子の変動解析結果を踏まえ,次に,その行動変化がシンクロナイザーニューロン(GABA interneuron)の機能変化に基づいていることについて,社会性機能関連脳領域へ電極を導入・設置することによって,行動実験中のPV陽性細胞特異的脳波(gamma-band activity)の活動解析を実施する。さらに,抑うつ症状・認知・社会性機能に深く関わる脳神経系の変化について,①海馬(背側・腹側),②帯状皮質(前部・後部),③扁桃体,④視床下部,⑤側坐核,の各領域で,神経新生・シナプス発達・栄養因子シグナル・Glutamate/GABA balance modulationの観点から,関連分子変動解析を実施する。加えて,脳5領域における転写制御因子NRSF/REST,(社会性機能との深い関連が報告されている) PV・Somatostatin陽性細胞数と関連蛋白otx2,後シナプス蛋白PSD95の発現変化を解析し,上記の観点に関わる分子変動として同定していく(既に,海馬・偏桃体領域と社会性・共感性神経回路ループを形成する帯状皮質領域において,somatostatin遺伝子の有意な変動を認める知見を得ている)。さらに,血液を用いた解析として,神経細胞特異的マーカー (L1-CAM) を発現した末梢血小胞中の分子群の定量解析を実施する。特に,脳神経系での変化に対応して,上記観点に関わるNRSF/REST,otx2,BDNF,およびmiRNA 206の含有量の比較測定を予定している。
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Causes of Carryover |
脳神経機能変化の分子変動解析において,抗体の価格等で,見積もりとの差異が生じた。次年度以降の病理解析で追加購入し,使用していく予定である。
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