2019 Fiscal Year Research-status Report
Basic research about the consecutiveness of schizophrenia and bipolar disorder through oxidative stress
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19K08030
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Research Institution | 福井医療大学 |
Principal Investigator |
小俣 直人 福井医療大学, 保健医療学部, 教授 (30334832)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
清野 泰 福井大学, 高エネルギー医学研究センター, 教授 (50305603)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 酸化ストレス / 脳組織 / 64Cu-ATSM / オートラジオグラフィー / 亜鉛欠乏 |
Outline of Annual Research Achievements |
最近の研究から、特に発達段階における亜鉛不足がうつ病の発症率や重症度と関連することが明らかとなっており、その機序として酸化ストレスの関与が想定されている。酸化ストレスは、これまで主に血中や尿中の酸化ストレスマーカーの変化から評価されてきた。一方で、うつ病では脳の様々な部位における機能変化の関与が示唆されており、その病態解明には酸化ストレスを脳の各部位で比較する必要がある。そこで我々の研究グループは、生体の酸化ストレスを画像化する[64Cu]-diacetyl-bis(N4-methylthiosemicarbazone)(64Cu-ATSM)をオートラジオグラフィー法に適用し、実験動物の脳組織における亜鉛欠乏時の酸化ストレスを評価することを試みた。3週齢のラットを搬入し、亜鉛欠乏群とコントロール群の2群を設定した。亜鉛欠乏群は、1週間の通常飼育後に食餌を普通食から亜鉛欠乏食に切り替えて、さらに2週間飼育した。飼育終了後、64Cu-ATSMを静脈投与し、オートラジオグラフィーを施行してその集積を前頭葉皮質、線条体、海馬および視床で比較した。また、血液サンプルを採取して、酸化ストレスマーカーである8-isoprostane(リン脂質由来)および8-hydroxy-2’-deoxyguanosine(8-OHdG, DNA由来)の濃度を測定した。 画像データからは、64Cu-ATSMの脳組織への取り込みが確認され、本手法により実験動物の酸化ストレスを評価できる可能性が示された。しかし、その集積は比較したいずれの脳部位においても、亜鉛欠乏群とコントロール群との間に有意な差は認めなかった。一方、血中の酸化ストレスマーカー濃度に関しては、コントロール群と比べて亜鉛欠乏群では8-isoprostaneは有意に上昇していたのに対し、8-OHdGは逆に低下傾向を示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初は2021年度より開始する予定であった、64Cu-ATSMを用いた脳内酸化ストレスの評価に着手することが出来たが、その有用性を示すまでには至っていない。 一方で、2019年度より開始する予定であった、様々な期間の社会的孤立の負荷や双極性障害様の行動に関する解析は、実験室の改修工事などもありまだ実施できていない。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに、亜鉛欠乏を2週間負荷すると、血中亜鉛濃度は著しく低下するが、脳組織内の亜鉛量には変化がないことが報告されている。従って、2週間の亜鉛欠乏では、64Cu-ATSMの集積に変化を来すまでには至らなかった可能性がある。亜鉛欠乏群においては、Zn-superoxide dismutase(Zn-SOD, 主に細胞質に存在する抗酸化酵素)の発現や活性が低下して、細胞膜のリン脂質由来である8-isoprostaneが上昇したのかもしれない。また、Zn-SODの発現や活性の低下に対してMn-SOD(主にミトコンドリアに存在)などの抗酸化酵素の発現や活性は代償的に上昇し、8-OHdGは低下傾向を示したのかもしれない。 今後は、亜鉛欠乏の負荷期間を2週間以上に延長することや、亜鉛欠乏に加えて社会的孤立など他のストレスも同時に負荷することで、64Cu-ATSMの脳内集積が変化しないかを検討していく。また、免疫染色法を用いて酸化ストレス物質の脳内分布やZn-SOD, Mn-SODなどの抗酸化酵素の発現を評価していきたいと考えている。 実験室の改修工事終了後は、様々な期間の社会的孤立の負荷や双極性障害様の行動に関する解析を開始する。
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Causes of Carryover |
(理由) 64Cu-ATSMの脳組織への集積が、亜鉛欠乏群とコントロール群との間に当初の想定よりも有意な差が生じず、他の方法も併せて検討し直す必要が生じた。また、様々な期間の社会的孤立の負荷や双極性障害様の行動に関する解析が、実験室の改修工事などもあり実施できなかった。 (使用計画) 亜鉛欠乏の負荷期間を2週間以上に延長することや、亜鉛欠乏に加えて社会的孤立など他のストレスも同時に負荷することで、64Cu-ATSMの脳内集積が変化しないかを検討していく。また、免疫染色法を用いて酸化ストレス物質の脳内分布やZn-SOD, Mn-SODなどの抗酸化酵素の発現を評価していきたいと考えている。実験室の改修工事終了後は、様々な期間の社会的孤立の負荷や双極性障害様の行動に関する解析を開始する。
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Research Products
(2 results)