2020 Fiscal Year Research-status Report
統合失調症の認知機能障害に対する新規の聴知覚・視知覚訓練の開発と改善効果の検討
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19K08034
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
豊巻 敦人 北海道大学, 大学病院, 特任助教 (70515494)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 統合失調症 / 認知機能改善療法 / 聴知覚訓練 / 視知覚訓練 / 脳波 |
Outline of Annual Research Achievements |
精神疾患は精神症状だけでなく情報処理に関わる神経認知機能や、対人場面で駆動する社会認知機能の障害が存在し、精神症状以上に社会生活機能に影響することが分かっている。特に統合失調症は神経認知障害の重症度が高く、現在では様々な認知機能改善療法(認知機能リハビリテーション)が提案され、我が国でも少数の施設であるが実践されている。しかし認知機能改善療法はメタ解析によると改善の効果量は軽度(Cohen’s d=0.4)であり、患者の神経認知機能、社会生活機能を十分に改善できるものではない。他方で、聴知覚処理を鋭敏にさせる聴知覚訓練は既存の認知機能改善療法より大きな改善の効果量を示している(d=0.8)。この聴知覚訓練は、カリフォルニア大学サンフランシスコ校、その後ミネソタ大学の研究グループでしか検討が行われておらず、他の研究者によるさらなる介入の工夫や、異なる文化圏の患者への効果についての検討が求められる。本研究では日本語版聴知覚訓練を作成し、さらに他の報告も踏まえ視知覚機能を向上させる知覚訓練を開発し、脳波、MRIによる神経可塑的変化、神経認知機能、社会生活機能への改善効果について検討する。 本研究では、具体的にはBrainHQという聴知覚訓練、視知覚訓練をオンラインで行えるサービスを用いて、患者を聴知覚訓練群、視知覚訓練群、何も行わない対照群に割付け、12週間の介入を行って前後で認知機能検査や神経可塑的変化の指標として脳波の事象関連電位、神経動同期について評価する。 2020年度は実際に患者をリクルートし、データを蓄積する予定であったが、新型コロナウィルスによる呼吸器疾患の感染拡大により、臨床研究は遂行が困難であったため、症例の登録、実施は全く無かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
2020年度は統合失調症患者をリクルートし、3群に割り付けてベースラインの各種検査、介入、介入後の各種検査を行う予定であった。しかしながら新型コロナウィルスの感染拡大で、大学の行動指針や政府、自治体から市民へ行動を自粛する要請が継続的に発せられたことから、患者との長時間の面談や検査は不適切と判断し、登録、計測は中止にしていた。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は大学の研究の行動指針、検査の実施場所である北海道大学病院の指針を鑑みながら、感染症対策を行い、患者の登録、計測、介入を行う。75例の症例登録、計測、実施を目指す。
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Causes of Carryover |
2020年度は本研究は患者をリクルートし、ベースラインとして精神症状、認知機能検査、脳波計測を行い、聴知覚訓練、視知覚訓練、対照群に割付け、12週後に、再度同じ計測を行う予定であった。研究費は主に患者への謝金(検査ごとで5000円、介入を完了した場合は1万円)として用いる予定であったが、新型コロナウィルスの感染拡大で、臨床研究を中止していたため謝金の支払いがなく、ほとんど使用しなかあった。 2021年度は、感染症対策を十分に行い、目標症例数である75例を目指して、登録、計測、介入を行っていく予定である。
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