2021 Fiscal Year Annual Research Report
自己抗体に起因する睡眠覚醒障害と精神疾患の病態の解明
Project/Area Number |
19K08037
|
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
神林 崇 筑波大学, 国際統合睡眠医科学研究機構, 教授 (50323150)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | オレキシン / ナルコレプシー / 視神経脊髄炎 / NMDA受容体脳炎 |
Outline of Annual Research Achievements |
ナルコレプシー(NA)はオレキシン神経の脱落により発症することが2000年に明らかとなり、HLA-DR*1501, DQB1*0602が90%で陽性であり免疫機序が働いていることは間違いないが、その脱落の機序は明らかでは無い。本態性NAの病態を探る目的のため症候性と考えられる過眠症の症例においてもオレキシン値の測定を続けて来ている。頻度が高いのはAQP4抗体とMOG抗体によるNMOやADEMが筆頭である。原疾患の治療により過眠症も改善する場合が多い。頻度は低いがMa2抗体による症例も存在する。高齢発症での原因検索にて、Ma2抗体と精巣腫瘍を見いだすことができたが、腫瘍の摘出後に過眠症状の改善はみられなかった。NAの治療中にNMDAR脳炎を発症する症例は散見され、脳炎の治療後には神経刺激薬を用いた治療の組み立てが難しい。両疾患の基盤にはBBBの脆弱性があるのではと想定している。NMDAR抗体の検討では、精神科の入院患者では0.5%程度の陽性率であった。2010年のH1N1インフルエンザの世界的な流行時には、ワクチン接種後に北欧で小児のNAの大幅な増加が認められた。中国では罹患した小児で大幅にNAが増加した。日本での増加はなかったが、国産ワクチンでは免疫賦活剤を含まなかったこと、抗インフルエンザ薬の使用等が背景因子の相違と考えられる。100年前に流行したスペイン風邪もH1N1ウイルスであることが明らかになっている。同時期のEconomo嗜眠性脳炎はH1N1ウイルスにより惹起された自己免疫性脳炎と考えられている。オレキシン神経を障害しての症状と考えられるが、情動脱力発作の報告はなく、総睡眠時間が延長しており病態は幾分異なると考えられている。抗体や免疫性疾患の視点からの睡眠覚醒障害の病態検索は非常に興味深く、これからも検討を継続して行きたいと考えている。
|
Research Products
(13 results)