2019 Fiscal Year Research-status Report
注意欠如他動性障害の神経基盤の男女差の解明-マルチモダルMRIを用いて
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19K08039
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
石井 礼花 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (40609020)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ADHD / MRI / 男女差 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.研究開始当初の背景:本研究は小児期の注意欠如多動性障害(ADHD)に対して、いままで検討が不十分であった男女の脳神経学的基盤の差を明らかにし、特に、女児に対するADHD診断の客観的指標を開発することを目的として行なっている。ADHD は小児期に最も多く見られる精神疾患で、男女比が2から10対1と男児が多く、症状の経過にも男女差があるといわれている。男女差の重要性が注目される ようになってきたが、脳神経学的基盤の男女の差は明らかとなっていない。 2.研究の目的:本研究の指標と して、侵襲性のない磁気共鳴画像(MRI)を用い、機能的および構造脳回路結合のADHDの男女の差を検討し、それぞれ定型発達児との判別を行い診断のための客観的指標の開発を目指している。客観的指標を導入する事により、いままで見逃されていたADHDの女児の診断と適切な治療が可能となり、ADHD女児の成人期の予後改善につながると考えられる。 3.研究の方法:対象は8~12 歳の定型発達女児、定型発達男児、ADHD 女児、ADHD男児、それぞれ30名、計120名。3テスラMR 装置を用いて、脳構造MRI、安静時機能的MRI および拡散テンソルMRI 撮像を行う。 4.研究成果:2019年度は、MRIの撮像プロトコールを構造画像(T1、T2)、安静時機能画像、拡散テンソル画像、ムービー鑑賞時機能画像について確定し、モックスキャナーでの事前のMRI撮像練習のプロトコールも作成し、撮像を開始しADHD女児2名、男児5名の撮像を行なった。また、男女の差を捉えるための質問紙を選定した。さらに、男女における差異が認められると考えられるソーシャルサポートネットワークの質と量を測定する面接と質問の開発を行なった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
MRIの撮像プロトコールを構造画像(T1、T2)、安静時機能画像、拡散テンソル画像、ムービー鑑賞時機能画像について確定し、モックスキャナーでの事前のMRI撮像練習のプロトコールを作成した。また、男女の差を捉えるための質問紙を選定した。さらに、男女における差異が認められると考えられるソーシャルサポートネットワークの質と量を測定する面接と質問の開発を行なった。2019年12月より、ADHD女児2名、男児5名の撮像を行なった。新型コロナウイルスの感染拡大により、2020年2月よりリクルートと撮像を行うことが困難となったため、その後の撮像は休止している。その間、以下を進めた。①モックスキャナーの有効性についてのレビュー:オンラインデータベースであるPubMed/Medline, PsycINFO, Scopus, Web of Scienceを用いて、2020年3月16日に論文の文献検索を実施した。この検索には、1980年から検索時までに公表された文献が含まれた。児童精神医学および心理学の知識と臨床経験を有する著者と研究協力者3名で、検索語を決定した。MRI検査の用語である“MRI”、“mock”、および “child”の3つのキーワードを検索に用いた。検索は言語や研究の種類に制限されなかった。18歳までの小児を対象としてMRI検査のためのPreparation programを実施している研究を抽出した。その上で、各論文の質の調査をSIGN check listに従って行い、また、PRISMA check listに従って、レビューを行なった。②コロナウイルスによる成育環境の変化について捉えるための質問紙を、米国国立衛生研究所(National Institutes of Health)のToolkit サイトより選定し、翻訳の上、オリジナルの質問を加えて作成した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究は、COVID-19による感染拡大の状況を見ながら、以下の方策によって進めていく。 1、モックスキャナーの有用性についての論文の完成と投稿する。 2、オンラインで、COVID-19の影響についてのADHDの男女比較調査を行う。特に、COVID-19の影響を測定する質問紙、および、COVID-19によるソーシャルネットワークの変化の男女差について検討することによって、この調査の独立データでも論文を出版できるようにする。 3、今後、MRIの撮像が再開できるようになった段階で、先に述べたADHD女児30名、ADHD男児30名、定型発達女児30名、定型発達男児30名のリクルートが速やかに行えるように、2のオンライン調査にて、参加された方がたにMRI研究へのご協力いただける方はMRI撮像再開に向けて待機していただく。 4,3の撮像が終わった段階で、速やかに解析できるように、今までの撮像データを用いて、予備解析を進め、解析のためのフローやスクリプトを確立する。先行研究から、ADHD女児の神経基盤において、認知機能 のトップダウン調節をつか頭葉に問題があると 考えられ、男児は、線条体などの基底核が関わるボトム アップ調節に問題がある可能性が考えられる。前頭葉における脳回路結合MRI信号によって、定型発達女児とADHD女児、および、基底核における脳回路 結合信号によって定型発達児男児とADHD男児とを分けることができるという仮説を検証する。
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Causes of Carryover |
2月から3月までのMRIの撮像がCOVID-19の影響によりできなくなったため、謝金および、MRI使用料の分が残金として発生した。
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