2020 Fiscal Year Research-status Report
社会的隔離モデルによる社会性の神経回路の同定 内側前頭前野ー橋ー小脳を中心に
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19K08078
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Research Institution | Nara Medical University |
Principal Investigator |
芳野 浩樹 奈良県立医科大学, 医学部, 研究員 (10347560)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 社会的隔離 / 前頭前野 / 錐体細胞 / 興奮性 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでの我々の研究において、マウスを幼若期に隔離飼育すると、成体に発達後の内側前頭前野第五層において、電気生理学的に大きなh-currentを有することで特徴づけられる特定の錐体細胞への興奮性シナプス入力が低下し、抑制性シナプス入力は増加した。この特定の錐体細胞への興奮性/抑制性シナプス入力のバランス変化と一致してこの錐体細胞の興奮性の低下も明らかとなった。これにより、幼少期の社会的刺激が不十分であると内側前頭前野第五層の特定の錐体細胞の活動性が低下すると解釈できるが、この錐体細胞が脳内においてどのような機能的位置づけを持つかはわかっていない。一方でこれまでの研究において、この特定の錐体細胞はその軸索を、視床・線条体・橋などに投射することが知られている。幼若期マウスの隔離によって、どの脳領域に投射する錐体細胞に機能低下が起こるかが解明できれば、社会的刺激により発達する脳内神経回路の一端を見出すことになると考える。そこで錐体細胞の投射先である視床・線条体・橋に逆行性トレーサーを注入し、それぞれへと投射する錐体細胞を判別したのちに、各錐体細胞から電気生理学的記録を行った。まず、これらの錐体細胞間に電気生理学的性質の差が見られることが明らかとなった。さらに、これらの三つの投射先別に隔離飼育によって受ける影響を調べたところ、一つの領域においてのみ隔離飼育による差が生じることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
過去に行ってきた電気生理学的手技、動物飼育の手技に加えて、脳の各領域に逆行性トレーサーを注入したのちに、判別可能となった錐体細胞から記録が行えるようになり、順調にデータ集積が可能となったため。
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Strategy for Future Research Activity |
視床・線条体・橋へと投射する3種の錐体細胞のうち隔離飼育により影響される錐体細胞が投射した先の脳領域内でどのような神経細胞と連絡するのかを明らかにする
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Causes of Carryover |
COVID-19感染症蔓延の影響で予定していた学会への参加が不可能となり次年度使用額が生じた。次年度にはWEB形式で研究業績を発表する際に使用する予定である。
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