2020 Fiscal Year Research-status Report
Chemoradiotherapy with MMC and UFT for muscle-invasive bladder cancer in elderly patients
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19K08127
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Research Institution | Iwate Medical University |
Principal Investigator |
有賀 久哲 岩手医科大学, 医学部, 教授 (30333818)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
菊池 光洋 岩手医科大学, 医学部, 助教 (90758137)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 膀胱癌 / 高齢者癌 / 化学放射線療法 / マイトマイシンC / ユーエフティ / 特定臨床研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,高齢筋層浸潤性膀胱癌患者を対象に,低侵襲性が期待される「マイトマイシンC+ユーエフティを同時併用した化学放射線療法の安全性と有効性」を検証することである。高齢患者の治療選択では独自の意思決定プロセスを要することが多く,60歳以降に急増する膀胱癌において高齢者にターゲットを絞った治療開発の意義は大きいと考える。今回検討するマイトマイシンC+5FUのレジメンは,欧米ではシスプラチンの投与が困難なフレイル患者に広く使われており,本疾患に対する標準治療の一つとしてコンセンサスが得られている。しかしわが国ではマイトマイシンCの静脈内投与に膀胱腫瘍の保険適応がないため,海外のエビデンスが活用されていない現状がある。本研究では特定臨床研究として日本人の臨床データを蓄積し,高齢者に対する低侵襲治療の実現を目指している。 しかし,現在マイトマイシンCは委託製造先の行政処分により自主回収となっており,臨床使用が困難である。岩手医科大学臨床研究支援センターの指導・協力のもと,臨床研究審査申請を延期し,臨床試験体制の拡充と保険適応薬を用いた予備研究を進めている。 2020年度は,岩手医科大学医歯薬総合研究所の協力のもと,Electronic Data Captureシステムを設計,立ち上げを行ない,臨床研究体制をさらに整備した。また,本研究からマイトマイシンCを除いた予備研究として,「高齢者膀胱癌患者を対象としたUFT併用放射線療法の安全性を調べる前向き観察研究」を計画した。この新規臨床研究は,岩手医科大学倫理委員会の審査を経て,登録開始となっている。今後は予備研究を進めると共に,本研究のさらなる申請前準備を行なっていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本研究は,2019年10月にキー・ドラッグであるマイトマイシンCが自主回収となったため,臨床研究審査委員会への審査申請前の段階で一時停止となってい る。回収時に「供給再開は2021年以降の見込み」と発表されていたが,2020年11月の続報にて「2021年中の供給再開は難しく,現時点では,明確な供給再開の時期につきましても目途が立っていない状況」とされた。マイトマイシンCには代替可能な医薬品はないため,緑内障治療では限定的な薬剤提供がなされているが,製薬会社より本研究のような特定臨床研究への薬剤提供は困難と結論された。2020年度は,代替薬品はないとの判断のもと,臨床研究支援センターの指導に基づき研究体制の拡充を進めた。 まず,岩手医科大学医歯薬総合研究所の助力を得て,Electronic Data Captureシステムを開発した。必要データを厳選し,オンライン環境で安全・確実にデータ収集を行なう基盤を整えた。臨床研究支援センターの指導に従うと共に,患者登録が遅延した場合の多施設共同研究化も考慮した措置である。マイトマイシンCの早期供給再開を期待して,他にも文書整備などの特定臨床研究審査申請への準備を進めた。 さらに,ユーエフティ単剤のみと放射線治療を同時併用する予備研究として「高齢膀胱癌患者を対象としたUFT併用放射線療法の安全性を調べる前向き観察研究」プロトコールを作成した。現在,わが国で膀胱癌に併用されている薬剤はシスプラチンが中心であり,その毒性から多くの高齢者には適用されていない。ユーエフティは保険適応がある薬剤であるが,その根拠となる研究は古く,最新の放射線治療を用いた研究はない。岩手医科大学倫理委員会の審査にて本研究の意義が認められ,承認を得ることができた。この予備研究に対し症例登録を開始している。
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Strategy for Future Research Activity |
特定臨床研究の承認を目指して,研究内容のブラッシュアップ,準備の拡充,研究体制の構築を更に進め,マイトマイシンCの供給再開後は早期に試験を開する。一方で,薬剤供給の更なる遅延を想定し,大学研究助成課等と他に取り得る可能性のある対応を検討する。 臨床研究としては,まずは予備研究である「高齢膀胱癌患者を対象としたUFT併用放射線療法の安全性を調べる前向き観察研究」に患者を登録し,高齢膀胱癌患者の基本特性,膀胱癌放射線治療(低侵襲化学放射線療法)の忍容性,毒性・QOLの客観的データを収集する。開発したElectronic Data Captureシステムを,この観察研究に合致するように一部修正を加え,実際の症例を登録しながら,システムの修正・改良を進める。具体的には,急性障害をエンドポイントとした早期究成果の翌年公開を目指す。 膀胱癌放射線治療の実施には施設間格差があり,短期間で症例を集積するには多施設共同研究が必要な可能性がある。比較的ハードルが低いと想定される「高齢膀胱癌患者を対象としたUFT併用放射線療法の安全性を調べる前向き観察研究」について多施設化のの検討を行ない,可能であれば多施設共同研究として情報収集する。その結果を踏まえて,「マイトマイシンC+ユーエフティを同時併用した化学放射線療法」の特定臨床研究に関する多施設化の実現可能性についても調査する。
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Causes of Carryover |
本研究のキードラッグであるマイトマイシンCが自主回収となり,提供再開期日も延期が公示された。そのため,予定していた臨床研究審査委員会への審査申請が更に次年度に延期された。予定していた審査費用,保険費用等は申請に必須であり,次年度の審査申請時に使用する予定である。予定されていた薬剤費も特定臨床研究が開始するまで延期される。
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