2021 Fiscal Year Research-status Report
温熱、放射線、免疫チェックポイント阻害剤を組み合わせた新規な複合療法の開発
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19K08151
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
高橋 豊 大阪大学, 医学系研究科, 招へい教員 (40353461)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小川 和彦 大阪大学, 医学系研究科, 教授 (40253984)
小泉 雅彦 大阪大学, 医学系研究科, 教授 (90186594)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 温熱療法 / 放射線 / アブスコパル効果 / 免疫チェックポイント阻害剤 |
Outline of Annual Research Achievements |
局所温熱療法(HT)は放射線治療や化学療法との併用で強い増感効果を引き起こす。最近、HTが腫瘍免疫活性化を促進することが明らかになりつつある。私たちは、2020年度までに、HTの免疫賦活効果およびHTと免疫チェックポイント阻害剤である抗CTLA-4抗体(C4)との併用による、遠隔腫瘍に対する効果と腫瘍内免疫微小環境をマウス乳癌モデル (4T1細胞)を用いて研究を行ってきた。4T1細胞を両足に移植し、片側腫瘍のみを42.5度で20分加温したところ、HT単独治療またはC4単独治療では十分な局所効果や遠隔腫瘍に対する効果(アブスコパル効果)が得られなかったが、併用療法では、強力な局所効果とアブスコパル効果を誘導し、肺転移の抑制と生存延長を示すことを明らかにしてきた。さらに、そのメカニズムは、併用療法により腫瘍内免疫環境が抗腫瘍効果に有利な状況に変化することに起因していることを明らかにした。 2021年度は、既存の有効な治療法が存在しない膵管癌に着目し、同様の実験を行ってきた。その結果、膵管癌に対してはHT単独およびHTとC4の併用によっても全く効果が得られないことが明らかになった。そこで、HTとC4に放射線 (RT)を加え、局所及びアブスコパル効果を検討した。その結果、高線量放射線照射(16Gy)とC4との併用により、著明なアブスコパル効果が惹起され、腫瘍中の細胞傷害性T細胞を誘導しつつ、制御性T細胞の誘導が抑制されることが明らかになった。一方で、膵癌はリスク臓器が隣接しているため、臨床上線量増加が困難であることから、HTを加え、放射線の線量を減少させて同様の効果が得られるか検討した。その結果。42.5℃30分のHTと放射線14 GyとC4の併用により、局所及びアブスコパル効果が得られた。これらの結果は、膵管癌に対し、新たな治療法を提案できる可能性を示唆するものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上述のように、HTが免疫チェックポイント阻害剤の効果を増強し、局所腫瘍への対する抗腫瘍効果の増強のみならず、アブスコパル効果、肺転移の抑制、生存率の延長、リンパ球の移入がアブスコパル効果や生存率の延長に重要であることの知見をInt J Hyperthermiaに投稿し、掲載され、大学院生の博士論文となった。膵管癌に対しても高線量RTとC4の併用で遠隔転移を制御できる可能性を示す結果が得られ、大学院生が国際学会で発表し、Young investigator awardを獲得した。また、HTとRTと免疫チェックポイント阻害剤を組み合わせることで、RTの線量を低減しても遠隔腫瘍制御が可能であることを示唆する結果を得ている。以上のことより、研究はおおむね順調に進んでいるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで得られた知見を基に論文化する。論文化の中で、査読者からのコメントに従い追加実験が必要となることが想定されるため、最終年度は当該実験並びに論文化等による情報発信を積極的に行う。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルスの影響で、一部実験を実施できなかった期間があったこと、論文執筆中にデータの見直しが生じたことにより、投稿が遅れた等のため。
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Research Products
(6 results)