2019 Fiscal Year Research-status Report
死後CT画像による死因診断基準の確立-肺所見を軸とした診断フローチャート作成
Project/Area Number |
19K08167
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
川住 祐介 東北大学, 医学系研究科, 准教授 (00513540)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 死亡時画像診断 / CT |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、体表からの検案では死因不明とされる異状死体について、死後CTの画像での死因診断基準を確立することである。2009年から蓄積してきた症例に、2019年度に新たに撮影した症例を加え、検討を行ってきた。 まず肺所見を基軸とすることにして、肺所見と死因との関連性評価を行ってきた。その結果、死後CTの肺所見を幾つかのパターンに分類することができた。そして「ほぼ陰影なし」のパターンを示す症例のほとんどは低体温による死亡例で、少数の気管支喘息や高体温症(熱中症)も含まれることが分かった。溺水は「気道散布」パターンと「胸膜に達する不均一水腫」パターンを示す傾向にあることが分かった。またこれら陰影パターンは、溺水以外に見られることは少なかった。虚血性心疾患と非虚血性心疾患との比較のみではあるが、虚血性心疾患では「胸膜に達しない不均一水腫」を示すことが比較的多く、非虚血性心疾患では通常の死後変化である血液就下のみを示すことが多いことが分かった。このように、死後CT肺所見のみで診断可能である、また鑑別可能である死因の絞り込みを進めることができた。 肺以外のCT所見として、今回は気管・主気管支内の液貯留に注目した。液貯留の有無を調べ、また貯留液の性状として、空気との境界面の形状とCT値を評価した。その結果、統計学的に、縊頸・絞頸、低体温症では液貯留を認めないこと多く、溺水では液貯留を認めることが多いことが分かった。一方、貯留液と空気との境界面形状や貯留液CT値には統計学的有意差は認められなかったため、これらで死因を判断することは困難であると考えられた。この内容の一部をまとめたものが、オーストリアのウィーンで開催されるEuropean Congress of Radiology (欧州放射線学会) のポスター発表として採択され、世界に発信した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
時期によってばらつきはあるものの、今年度も一定数の法医解剖前CT検査が実施されており、CT所見および剖検所見は概ね予定通りに蓄積されている。 肺容積や肺野平均CT値も、比較的境界の明瞭な症例では測定することが可能になってきている。実際に測定された症例に関しては、死因との関連性(特に溺水)の評価を開始している。 また過去に蓄積された症例もあわせることにより、肺所見と死因との関連性や、肺所見のみでの死因診断能の評価が、より多くの症例で検討可能になってきている。同時に、肺以外の所見の検討も、少しずつではあるが始めている。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き法医解剖前CT検査を実施し、症例を蓄積していく。 肺容積や肺野平均CT値測定に関しては、測定方法の修正を検討し、測定の難しい症例での測定を試みる。測定可能症例を増やし、死因との関連性評価や重量推定をより多くの症例を用いて実施できるようにする。 CT肺所見のみでの死因診断フローチャートを、ほぼ完成形までに近づける。さらに肺以外の所見と死因との関連性調査を進める。
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Causes of Carryover |
理由:学会参加が予定よりも少なかったため。また論文投稿がなかったため、ソフトウエアの購入や英文構成なども少なかった。
使用計画:CTデータ保存およびバックアップ用のストレージデバイス、メディアの購入。データ解析を行うための統計解析やグラフ作成など各種ソフトウェアの購入。国内・国際学会への参加費、論文作成支援ソフトウェア購入および英文校正費。
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Research Products
(1 results)