2019 Fiscal Year Research-status Report
Boron distribution study for newly developed BNCT agents
Project/Area Number |
19K08194
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
中井 啓 筑波大学, 医学医療系, 准教授 (50436284)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉田 文代 筑波大学, 医学医療系, 研究員 (30261811)
中村 浩之 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 教授 (30274434)
白川 真 福山大学, 薬学部, 講師 (40707759)
松本 孔貴 筑波大学, 附属病院, 病院助教 (70510395)
鶴淵 隆夫 筑波大学, 医学医療系, 講師 (70778901)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ホウ素中性子捕捉療法 / 薬物動態 / 血中滞留性 / 担がんマウス / 腫瘍増殖抑制試験 / PEGリポソーム |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでのところ、研究は順調に進んでいると考えている。申請した実施計画のうち、サイズの大きい、血管滞留性の高いPEGリポソーム粒子の合成に共同研究者の白川が成功し、おおよそ400nmの安定したホウ素内封PEGリポソームが利用可能となった。これを用いて、京都大学実験原子炉において、担がん動物に投与した中性子照射実験を行なった。担癌マウスは、CT26を大腿皮下に移植して使用した。照射後、皮下腫瘍サイズを経時的に計測することによって、腫瘍増殖抑制試験を行なった。その結果、照射中に血管内に存在しているホウ素含有リポソームは、抗腫瘍効果をほとんど示さないことが判明した。リポソーム投与群では、照射時の腫瘍平均体積が2401mm3、28日後の腫瘍平均体積が5460mm3であったのに対して、照射のみの群ではそれぞれ200mm3および4490mm3であり、有意差を認めなかった。 現在は、このリポソームの血管内滞留性について、血液濃度、組織濃度を測定するための試料作成を行なっている。これらの項目における中性子捕捉療法での効果との関連をあきらかにすることを目標として、さらに、シミュレーションの計算への応用を考え、皮下腫瘍ならびに皮膚、皮下組織、筋肉等の組織切片における血管の体積比等を検討する予定である。 現在のところ、実績に示せるような考察を含めたまとまった結果となっていないため、来年度以降の検証を合わせ、学会発表、論文化を予定する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
京都大学実験原子炉で動物実験を既に行なっており、研究実施計画における、主要II項目を達成した。(1)おおよそ400nm直径の、血管滞留性の高いPEGリポソーム粒子の合成に共同研究者の白川が成功した。 (2)京都大学実験原子炉において、担がん動物に投与した中性子照射実験を行なった。照射後、腫瘍サイズを経時的に計測することによって、腫瘍増殖抑制試験を行なった。その結果、リポソーム投与群では、照射時の腫瘍平均体積が2401mm3、28日後の腫瘍平均体積が5460mm3であったのに対して、照射のみの群ではそれぞれ200mm3および4490mm3であり、有意差を認めなかった。したがって、照射中に血管内に存在しているホウ素含有リポソームは、抗腫瘍効果を示さないか、あってもかなりその割合が低いことが判明した。このことは研究申請時点における当初の仮説とは異なる結果であるが、さらに、間質でのホウ素濃度を可視化する手法を検討し、精密な動態評価をおこないたいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、このPEGリポソームの血管内滞留性について、血液濃度、組織濃度を測定するための試料作成を行なっている。これらの項目における中性子捕捉療法での効果との関連をあきらかにすることを目標として、さらに、シミュレーションの計算への応用を考え、皮下腫瘍ならびに皮膚、皮下組織、筋肉等の組織切片における血管組織の体積比、血液量等を検討する予定である。さらに、間質でのホウ素濃度を可視化する手法を検討し、精密な動態評価をおこないたいと考えている。また、得られた結果をもとに、考察を深めるための追加データの取得に勤め、組織の定量などを行い、微小環境のシミュレーションへの応用を追加で検討してゆく予定とする。
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Causes of Carryover |
原子炉実験および加速器実験のマシンタイムが予定よりも少なかったため。特に東海村の加速器については、今年度ほぼ稼働せず、実験は行えなかった。したがって、繰り返し実験、線源を変えての比較はできなかった。
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