2019 Fiscal Year Research-status Report
放射線照射後のDNA修復応答による免疫関連リガンド発現機構の解析
Project/Area Number |
19K08195
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
佐藤 浩央 群馬大学, 重粒子線医学推進機構, 助教 (90750571)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 炭素イオン線照射 / 免疫チェックポイント / DNA損傷シグナル / DNA修復シグナル |
Outline of Annual Research Achievements |
マウスモデルでの実験に先行し、培養細胞株に対する炭素イオン線照射後のPD-L1発現誘導メカニズムの解明を目指した。 ヒト腫瘍細胞株であるU2OS, MCF-7, HCT116を用いて、炭素イオン線照射後のPD-L1発現を解析した。PD-L1発現におけるDNA損傷シグナル(ATR, Chk1)の関与に着目し、それぞれの阻害剤を、炭素イオン線およびX線照射の30分前に投与した。さらに、X線照射後のPD-L1発現誘導に寄与していた、STAT/IRF1経路の関与も解析した。PD-L1発現レベルはWestern blot、Flow cytometry、リアルタイムPCRにて解析した。 結果として、炭素イオン線照射後のPD-L1発現誘導レベルは、同物理線量のX線照射よりも高度であることが明らかになった。またこのPD-L1発現は、X線と同様、ATR/Chk1といったDNA損傷シグナルと、その下流でのSTAT-IRF1経路を介して制御されることを解明した。同じ経路による制御を受けるものの、炭素イオン線照射ではX線よりも複雑なDNA損傷が誘導されるため、同経路は強く活性化され、それによって、X線よりも高度にPD-L1発現が誘導されると考えられた。 本研究結果は、炭素イオン線治療後の残存腫瘍におけるPD-L1発現誘導レベルは、従来のX線治療よりも高い可能性があり、臨床的には抗PD-1/PD-L1抗体を併用する意義が高い可能性を示唆する点で、重要な結果と考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していたマウスモデルへ移行する前に、炭素イオン線照射後のPD-L1発現経路のより詳細な解析を先行した。PD-L1発現に関してはX線照射と炭素イオン線照射それぞれ同じ経路による制御を受けていたことから、他の解析予定の免疫関連分子についても、まずは同経路に着目した解析を進めるべきと仮説を立てることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
腫瘍特異的な抗腫瘍免疫反応を促すのに重要なHLA class Iに着目する。これまで放射線治療後のHLA class I発現メカニズムの解析はほとんど行われておらず、炭素イオン線照射後の解析は前例がない。 放射線照射後のHLA class I発現制御機構について培養細胞株をもちいた解析を進め、マウスモデルでの再現を予定している。
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Causes of Carryover |
外部の助成金にも採択され、使用期限の都合からそちらを優先的に使用したため。
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Research Products
(6 results)