2019 Fiscal Year Research-status Report
がん抑制遺伝子CDKN2A変異がんに対する重粒子線の細胞死誘導機構の解析
Project/Area Number |
19K08214
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Research Institution | National Institutes for Quantum and Radiological Science and Technology |
Principal Investigator |
矢島 浩彦 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 放射線医学総合研究所 人材育成センター, 主幹技術員(任常) (30261895)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中島 菜花子 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 放射線医学総合研究所 重粒子線治療研究部, 研究員(任常) (50402863)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 重粒子線治療 / 放射線応答 / がん抑制遺伝子 / がん治療 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、重粒子線(炭素線)の生物効果に対するCDKN2A変異の影響を明らかにするため、ヒト正常細胞およびCDKN2A変異腫瘍細胞の放射線応答を解析した。低LET(線エネルギー付与)放射線のX線および高LET放射線の炭素線(LET~70 kev/μm)を細胞に照射し、p53発現量の変化を経時的に解析すると、CDKN2Aおよびp53に変異が無い正常細胞(HFLIII)及び骨肉腫細胞(U2OS)においては、X線照射によりp53発現量が増加し、24時間後も高いレベルで維持される。しかし、CDKN2Aに変異を有するヒト乳癌細胞MCF7では、X線照射後に増加したp53発現量が4時間後には低下し、さらに増加と低下を繰り返す、発現量の振動がみられた。炭素線照射においても発現量の振動は認められるものの、発現量は高いレベルのまま維持されていた。放射線照射24時間後のアポトーシスは、HFLIIIおよびU2OSではX線と炭素線による差異は小さく、MCF7ではX線によるアポトーシス誘導は少なく、炭素線照射により著しく増加した。また、細胞老化を引き起こすp21の発現量を、解析すると、炭素線照射後のMCF7のp21発現量は同線量のX線と比較して有為に高かく、炭素線照射後のMCF7はX線照射後と比較して3倍程度高度に細胞老化が誘導されていた。炭素線はX線と比較して高度にDNA損傷シグナルATR・ATMを活性化することが分かっているが、ATM・ATR阻害剤により、炭素線照射後のMCF7のアポトーシス、細胞老化誘導が阻害された。 これら結果から正常細胞においては、放射線応答に活性化されたCDKN2Aによってp53発現が安定化され、アポトーシス・細胞老が引き起こされるが、CDKN2A変異がん細胞においてはp53発現が安定化されないため、放射線誘導の細胞死に抵抗性にることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
重粒子線照射実験の日程が限られており、CDKN2A遺伝子導入MCF7細胞およびp14およびp16欠損細胞株が、照射実験予定までに得られなかったため。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウィルス関連の非常事態宣言により、放射線照射実験が制限されているため、実験の遅れが予想されている。再開され次第、遺伝子改編細胞を用いて照射実験を進める。
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