2021 Fiscal Year Annual Research Report
がん抑制遺伝子CDKN2A変異がんに対する重粒子線の細胞死誘導機構の解析
Project/Area Number |
19K08214
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Research Institution | National Institutes for Quantum Science and Technology |
Principal Investigator |
矢島 浩彦 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 量子生命・医学部門, 主幹技術員 (30261895)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中島 菜花子 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 量子生命・医学部門量子医科学研究所, 研究員 (50402863)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 放射線治療 / 重粒子線治療 / DNA損傷応答 / 膵癌 |
Outline of Annual Research Achievements |
CDKN2A(Cyclin dependent kinase inhibitor 2A)はp16INK4a(以下p16)とp14ARF(以下 p14) をコードするがん抑制遺伝子であり、がんにおけるCDKN2A変異はp53に次いで多い。p16は、 細胞周期を調節し、細胞老化を誘導する機能を持つ。p14はMdm2によるp53の分解を防ぐことでp53の安定的発現を調節し、がん細胞の増殖を抑制する。CDKN2Aは内因性の遺伝子不安定性を監視し排除するサーベイランスシステムとして機能していると考えられ、機能欠損 は発がんにつながる。30~40%の乳がんは p14の機能を欠損し、膵がんの 90%以上は、変 異・遺伝子欠損によりp16機能を欠損していると言われている。放射線治療において、p16は DNA損傷応答シグナルを受けて、細胞老化を誘導し、細胞増殖を抑制する。p14はp53依存性 のアポトーシス誘導をサポートする。そのため、p16/ p14欠損がん細胞は、治療抵抗性を呈する。 我々はこれまでに、ヒト乳がん細胞MCF7 (p53 Wt, p14 Null, p16 Wt)、ヒト膵癌細胞MIA-Paca2 (p53 Mutant, p14 Null, p16 Null) の放射線初期応答を解析し、 これらの細胞株がX線に対して抵抗性を持ち、重粒子 線の生物効果比が著しく高いことを見いだした。 さらに、重粒子線はMCF7のアポトーシス及び細胞老化を高度に誘導することを明らかにした。 重粒子線は複雑なDNA損傷を誘導することでDNA損傷応答経路を高度に活性化し、p53の安定化を維持、p21発現を誘導し、アポトーシスおよび細胞老化を高度に誘導することを明らかにした。 このことから、重粒子線治療はCDKN2A機能欠損による治療抵抗性がんに対しても高い生物効果が得られることが強く示唆された。
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