2022 Fiscal Year Annual Research Report
脳内のチオシアン酸イオン排出速度の非侵襲的定量測定法の開発とその排出機構解明
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19K08241
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Research Institution | National Institutes for Quantum Science and Technology |
Principal Investigator |
岡村 敏充 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 量子医科学研究所 先進核医学基盤研究部, 主任研究員 (80443068)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | PET / チオシアン酸イオン / 排出システム |
Outline of Annual Research Achievements |
脳内のチオシアン酸イオン(SCN-)排出速度の定量測定は毒性評価、SCN-排出機構の解明や病態解明に重要な役割を果たすと考えられるものの、脳内に直接微量投与するという侵襲的な方法を除いて、SCN-排出能の評価法は未だに開発されていない。そこで、本研究では、脳組織におけるSCN-の排出速度を非侵襲的かつ定量的に測定するための方法の開発を行った。前年度までに候補化合物の設計・標識合成および動物での評価を行い、6-[11C]thiocyanatopurine誘導体([11C]TP)がSCN-排出システムのプローブとして望ましい性質を有することを見出した。すなわち、[11C]TPはマウスに静脈内投与後、血液脳関門を通過して脳内に移行し、投与後5分までに未変化体の[11C]TPは完全に消失した。さらに、脳内の放射性代謝物は[11C]SCN-として存在していることが判明した。これらのことから、[11C]TP投与後5分以降の脳内放射能の減少は[11C]SCN-の排出と考えられるので、その脳内動態から[11C]SCN-の排出速度を非侵襲的に推定することが可能となった。本年度は、排出速度に対するSCN-輸送阻害剤(過塩素酸イオン)の影響を評価した。その結果、脳内で生成した[11C]SCN-の排出速度は阻害剤の投与量に依存して減少し、最大投与量で対照群と比べ82%の速度の減少が認められた。以上のことから、[11C]TPは測定原理に従った動態を示し、[11C]TPによる脳内のSCN-排出速度の非侵襲的定量評価の可能性が示された。さらに、ナトリウム・ヨードシンポータ欠損マウスを用いて[11C]SCN-の排出速度を評価したところ、その速度は正常マウスと比較し有意に低下したことから、チオシアン酸イオンはナトリウム・ヨードシンポータを介して脳から排出されていることが明らかとなった。
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Research Products
(2 results)