2019 Fiscal Year Research-status Report
超高磁場MRI:多素子並列RF励起技術の安全性確立と局所超高分解能撮像への展開
Project/Area Number |
19K08244
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Research Institution | National Institute of Information and Communications Technology |
Principal Investigator |
上口 貴志 国立研究開発法人情報通信研究機構, 脳情報通信融合研究センター脳機能解析研究室, 主任研究技術員 (80403070)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山田 幸子 大阪大学, 医学部附属病院, 診療放射線技師 (40623054)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | MRI / 超高磁場 / RF波 / 安全性 / SAR |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、7T超高磁場MRIにおいて多素子での並列RF励起を安全に行うための技術開発と、その技術の一つの応用例として局所超高解像度撮像の実現を目指している。当該年度では最初のステップとして、RF誘導加熱に伴う体内温度の上昇をMRIで得られる情報から3次元的に再構成(可視化)するための技術開発に着手した。 まず、温度変化をMRIで捉えるためには、温度に感度をもつ計測が必要であり、これには共鳴周波数の温度特性を利用しようと考えた。すなわち、水の共鳴周波数が温度依存であるのに対して脂肪のそれは温度に依存せず、MRIの画像上、任意の位置において水と脂肪の位相差を求めることで、理論的には当該位置での温度変化を追跡することが可能である。ただし、実際には同一箇所から水と脂肪の位相差を得ることはできないため、脂肪の位相情報は画像内に描出された異なる位置での脂肪組織から求めることとした。また本研究では、7T MRIの典型的な応用例としてヒト脳の機能計測を想定しており、撮像にはそれに適したEPI法の応用を考えた。そして水と脂肪の情報が得られる特殊なEPI法のパルスシーケンス(撮像のためのプログラム)の開発を行い、プロトタイプを完成させた。 次に、MRIによる温度計測の精度等を検証するための実験系の開発に取り組んだ。これには人体組織と導電率等が近似する試料を封入した模擬検体(ファントム)と、超高磁場での使用に耐える光ファイバー温度計を用いることとし、さらに脂肪組織を模擬するための動物性油脂を配置した。そして開発したプロトタイプEPIシーケンスを用いてMRIによる温度計測実験を行い、光ファイバー温度計での温度実測結果と比較した。その結果、経時的にMRI撮像を繰り返したときのRF誘導加熱による温度変化をMRIでの位相差として捉えることができ、両者には線形の関係を認めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
開発したEPIプロトタイプパルスシーケンスは、脂肪に対する撮像感度が想定以上に低く、その原因究明に時間を要したため。従来の一般的なMRI磁場強度である1.5Tから3Tでは、脂肪組織は十分に画像化されていたことから、7Tにおいてもそうであろうと想定していたが、実際には脂肪信号が非常に低く、これは局所的な磁場の不均一性が強く顕在化したものと考えており、その対応について、なおも検討中である。
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Strategy for Future Research Activity |
基本的には当初の計画通りに進める予定であるが、進捗によっては、本研究のもう一つの重要な軸である撮像の高解像度化を優先する可能性があり、全体として成果が最大化されるような方策を取る予定である。 今年度の成果であるMRIでの温度計測の実現については、現在のところ、温度変化に対する計測感度が実用上十分とはいえず、引き続き、パルスシーケンス開発とファントムでの実証実験を継続する必要があると考えている。
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Causes of Carryover |
パルスシーケンス開発に時間を要したため、その後に実施する予定であったファントム開発や計算機シミュレーション、画質評価等に必要な物品購入を見合わせていたこと、また同じ理由により、成果発表等の頻度が少なかったことによる。 次年度使用額の大半については、翌年度の助成金と合わせてファントム開発や計算機シミュレーションに必要な機材、計算機等の購入に充当し、その残りの次年度使用額については翌年度助成額と合わせて、研究成果発表に充当する予定である。
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Research Products
(7 results)