2021 Fiscal Year Research-status Report
ウィリアムス症候群の社会行動異常に関わる遺伝子の探索
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19K08251
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
木村 亮 京都大学, 医学研究科, 講師 (20636641)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ウィリアムス症候群 / DNAメチル化 / ネットワーク解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
ウィリアムス症候群は、7番染色体長腕7q11.23領域の片側にある約28個の遺伝子の欠失によって生じ、特徴的な顔貌・心血管や内分泌異常・知的障害・過度な社交性などの様々な症状を呈する。しかし、多彩な症状の原因の大部分は未解明であり、欠失領域にある遺伝子の解析だけでは難しいことがわかってきた。 我々はウィリアムス症候群について、遺伝子発現異常に着目した研究を進めてきた。その結果、欠失領域以外の複数の遺伝子が病態に関与すること(Kimura R et al. J Child Psychol Psychiatry 2019)や、それら遺伝子群の異常によって、ウィリアムス症候群にはBurkittリンパ腫発症リスクがあること(Kimura R et al. Front. Genet. 2018)を報告してきた。このようにウィリアムス症候群では、ゲノム全域での遺伝子の発現変動が病態に関わるという知見が集まりつつある。しかし、その機序は不明であり、特徴的な社会行動異常に関わる遺伝子は明らかになっていない。 遺伝子発現の制御に関わる重要な因子の一つとして、DNAメチル化が知られている。DNAメチル化は社会性行動だけでなく、自閉スペクトラム症などの発達障害の病態に関わっていることが知られている。そこで本研究では、患者検体を用いてDNAメチル化変化を探索し、これまでの研究手法を発展させたネットワーク解析を適応し、社会行動異常に関わる遺伝子を同定する。さらにゲノム編集技術を用いて変異ゼブラフィッシュを作成し、行動解析にて社会性を評価する。本研究の結果は、ウィリアムス症候群だけでなく、社会性の低下を来す自閉スペクトラム症の治療への応用が期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2019年度に、収集した臨床検体(末梢血)から抽出したDNAについて、Agilent TapeStationシステムを用いて、品質確認を実施した。その結果をもとに、Infinium Methylation BeadChip(イルミナ社)を用いたマイクロアレイ法で、DNAメチル化変化を調べ、合計70例について、解析ソフトRの ChAMP package 等を使ってメチル化変動した遺伝子を同定した。また、社会性に関わる遺伝子として知られている、オキシトシン受容体についてDNAメチル化の変動を調べ、論文発表を行った。 2020年度は、共メチル化ネットワーク解析を実施し、ウィリアムズ症候群に特異的なDNAメチル化変化遺伝子群および、DNAメチル化異常ネットワークの中心となるハブ遺伝子を同定し、パイロシークエンス法によるメチル化定量を実施するとともに、論文発表を行った。 2021年度は、これまでの結果をもとに研究協力者とゼブラフィッシュを用いて、ゲノム編集による神経発達症モデルの作出、モデルを用いた行動解析による表現型解析をすすめた。行動解析は、新奇探索テスト、明暗テスト、ミラーテスト、3チャンバー社会性テスト、2-fish社会性テストを実施できるシステムを整えた。一方、新型コロナ感染拡大等の影響により、試薬・消耗品などの入荷が遅延し、研究進捗に遅れが生じた。そのため、研究延長申請が承認され、2022年度も引き続き研究継続することとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、研究協力者とともに作成した神経発達症モデルゼブラフィッシュを用いて、行動解析システムを活用した表現型解析を続けている。現在、新たに睡眠覚醒リズムについて評価する系を構築中である。これらを用いてモデルの行動特性を評価し、さらに既存の向精神薬や当研究室が所有する化合物の効果をみる予定である。
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