2020 Fiscal Year Research-status Report
未熟児網膜症マウスモデルにおける細胞内抗酸化物質チオレドキシンの重要性
Project/Area Number |
19K08259
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Research Institution | Saitama Medical University |
Principal Investigator |
難波 文彦 埼玉医科大学, 医学部, 准教授 (20643323)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 未熟児網膜症 / 高濃度酸素 / 動物モデル / 血管新生 / 無血管野 |
Outline of Annual Research Achievements |
未熟児網膜症(ROP)は、未熟児の重篤な眼合併症である。ROP動物モデルとして新生仔マウスに対する高濃度酸素暴露が利用される。チオレドキシン(TRX)は抗酸化酵素で、抗酸化作用に加え、好中球の炎症部位への血管外漏出も抑制し、抗炎症作用も併せ持つ。TRXとROPとの関連についての検討を行った報告はない。本研究では、ROPマウスモデルにおけるTRXの重要性を評価した。 日齢7のTRXトランスジェニック(Tg)または野生型新生仔マウスに高濃度酸素(75%)またはルームエア(21%)を5日間暴露した。暴露直後および暴露後5日間の回復後、両側眼球から網膜を摘出した。右網膜はRNAを抽出し、定量PCRを行った。左網膜は4%パラホルムアルデヒドで固定し、抗CD31抗体を用いたホールマウント血管染色を行い、画像解析ソフトウェアを用いて、新生血管および無血管領域を定量した。 ホールマウント血管染色を用いて、正常新生仔マウス網膜内で形成される網膜血管を観察できた。新生仔期高濃度酸素暴露した野生型マウスの網膜では、非暴露網膜と比較して、血管新生の抑制と毛細血管の脱落が観察され、無血管領域/全網膜面積比が高かった。さらに、暴露回復5日後の網膜では、無血管領域に網膜血管の進展・蛇行、凝集した異常血管構造がみられた。TRX・Tgマウス網膜では、高濃度酸素暴露後の血管新生抑制・毛細血管脱落・網膜血管異常構造の表現型がいずれも軽減した。野生型マウスと比較して、TRX・Tgマウスでは、高濃度酸素暴露による網膜VEGFおよびCXCL2の遺伝子発現低下を回避した。 新生仔マウスに高濃度酸素を暴露することにより、網膜内無血管領域の拡大とその後の異常血管新生を伴うROPマウスモデルを確立した。TRX・TgマウスはこれらROPマウスモデルの表現型を軽減させた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
おおむね研究計画どおりに進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
網膜組織の免疫組織化学を行うことにより、高濃度酸素暴露の血管透過性に対する影響を評価し、TRX・Tgと野生型マウス網膜の血管透過性を比較する。研究結果をまとめて、学会発表および論文投稿を行う。
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Causes of Carryover |
本年度は、COVID-19の影響により、国際および国内学会の現地出席がかなわず、旅費等が予定通り使用できなかった。次年度は、COVID-19の終息が見られたら、例年通り国際学会に出席する予定である。また、研究成果はOpen Access誌に投稿する予定であり、当初よりも支出が増えるため、次年度使用額の一部はそちらに使用する。
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