2023 Fiscal Year Research-status Report
Gene mutational analysis of benign childhood epilepsy for precision medicine
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19K08269
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
福與 なおみ 東北大学, 医学系研究科, 非常勤講師 (90400366)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 小児欠神てんかん / 中心・側頭部に棘波を持つ小児てんかん / 遺伝学的背景 / 予後 / 抗てんかん発作薬 |
Outline of Annual Research Achievements |
小児において良性といわれてきたてんかんも原因遺伝子が徐々に解明されつつあるものの、発達性てんかん性脳症に比べて原因遺伝子の同定は少ない。また、良性といわれながらもてんかんが難治に経過したり、知的予後が良いとは言えない症例も少なからず存在する。小児のてんかんにおいて、genotype-phenotypeの関連性(遺伝型と知的予後や発作予後の関連性)は未解明であるのが実状である。 申請者は、これまでに確立したマイクロアレイCGH法と次世代シークエンサーを用いたエクソーム解析により、小児てんかんにおける遺伝子型と表現型の相関性が明らかにすることを考えた。予後判定に有用な臨床的指標やバイオマーカーを見出すのみならず、個々の症例に適した抗てんかん発作薬の選択も可能になると推測したからだ。 小児良性てんかんの中でも、特に診断根拠が明確な小児欠神てんかんと中心・側頭部に棘波を持つ小児てんかんに着目し、これらの症例の検体収集と遺伝子解析を行ってきた。 2021年度は、後方視的な診療情報の解析をした。中心・側頭部に棘波を持つ小児てんかんにおいては、神経発達症を合併している症例ほど発作頻度が多く、抗てんかん発作薬を必要とする傾向があることを見出した。2022年度は、知的障害と自閉スペクトラム症を合併しているそれぞれの症例で、X遺伝子とY遺伝子の病的バリアントの存在を確認した。2023年度は、収集した34例の中心・側頭部に棘波を持つ小児てんかんと、12例の小児欠神てんかんの臨床経過を検討した。この両疾患が自然終息性または薬剤反応性であることを確認できたが、どちらの疾患においても、詳細な臨床経過と遺伝学的背景の関与を見いだすことはできなかった。一方で、神経発達症を合併している割合は、中心・側頭部に棘波を持つ小児てんかん、小児欠神てんかんそれぞれ約20%と40%と、疾患ごとの合併率を明らかにすることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
対象疾患のgenotype-phenotypeの関連性の検討結果から予後判定に有用な臨床的指標やバイオマーカーをみいだし、個々の症例に適した抗てんかん薬の選択(個別化医療)を確立する予定だった。しかし、実際には収集した症例の遺伝子解析を実施するも疾患感受性遺伝子の同定にいたっていなく、genotype-phenotypeの関連性の解析は実現できていない。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナ感染症の分類が変更されたことにより、県内他医療機関や全国の医療機関における検体収集の協力を期待できる。症例収集に努め、疾患感受性遺伝子の解析を進める。本研究で疾患感受性遺伝子が見つけられなかった場合は、これまで明らかにされている神経発達症の疾患感受性遺伝子に着目し、中心・側頭部に棘波を持つ小児てんかんや欠神てんかんの疾患感受性遺伝子の同定を模索する。 また、併存症の存在と発作予後など、各症例の臨床経過を蓄積する。これまで報告されているのは、てんかん全般と神経発達症の併存の比率のみである。2023年度の研究で明らかにした小児欠神てんかんと中心・側頭部に棘波を持つ小児てんかんと神経発達症の併存頻度(40%と20%)のデータをもとに、両疾患の抗てんかん発作薬の適応や選択、発作予後との関連性について検討する予定である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの感染症が5類に移行されたものの、医療現場では感染拡防止の対策は継続されていた。そのことにより、慢性疾患であるてんかん患者やその家族が病院に受診する機会が減少傾向が持続し、遺伝子解析の同意の取得は困難だった。また、新型コロナ感染症以外の感染症拡大による医療ひっ迫により、2023年度に実施予定だった解析を実現できなかった。この2つの要因が、次年度使用額が生じた理由である。 2024年度は、2023年度に収集できなかったトリオサンプルを収集し、疾患感受性遺伝子の同定を目指す。新型コロナ感染症の分類が変更されたことにより、県内他医療機関や全国の医療機関における検体収集の協力を期待できる。本研究で疾患感受性遺伝子が見つけられなかった場合は、これまで明らかにされている神経発達症の疾患感受性遺伝子に着目し、中心・側頭部に棘波を持つ小児てんかんや小児欠神てんかんの疾患感受性遺伝子の同定を模索する。また、併存症の存在と発作予後など、各症例の臨床経過を蓄積する。
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