2020 Fiscal Year Research-status Report
正常妊娠維持および不育症におけるスフィンゴ脂質代謝の役割の解明
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19K08275
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
水岸 貴代美 京都大学, 医学研究科, 研究員 (70518448)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 胎児医学 / スフィンゴ脂質 |
Outline of Annual Research Achievements |
スフィンゴ脂質代謝は妊娠の維持、特に子宮の脱落膜化に重要な役割を果たしている。スフィンゴ脂質代謝の重要な酵素である、スフィンゴシンキナーゼの遺伝子改変マウスでは、妊娠早期にほぼ全ての胎児が子宮内で死亡する。これまでの研究で、スフィンゴシンキナーゼ遺伝子改変マウスの脱落膜組織において、CXCL1、CXCL2などの好中球遊走因子の発現が著明に増加しており、その部位に一致して好中球が異常に浸潤して脱落膜組織障害が起こり、ほぼ全ての胎児の早期死亡につながることを明らかにしてきた。さらに、好中球の新たな殺菌作用として注目されている、neutrophil extracellular traps (NETs)が流産の発症に重要な役割を果たしていることを明らかにし、NETsの生成を阻害する化合物をマウスに投与すると、流産の発症を抑制することができた。NETs形成では、peptidylarginine deiminase 4 (PAD4)酵素による、ヒストンのアルギニン残基からシトルリン残基への変換 (シトルリン化)が鍵である。今回、子宮内膜脱落膜化および流産発症における、PAD酵素/シトルリン化の役割について検討を行った。PAD酵素には、PAD1-4、PAD6の5種類が存在する。PAD1、PAD2、PAD4の妊娠子宮における発現を解析し、それぞれに特徴的な発現パターンがあることを見出した。さらに、マウス脱落膜組織ホモジェネートを用いて、質量分析によりPAD酵素の基質を同定した。有望な候補である基質分子の妊娠子宮における発現パターンを解析し、野生型マウス、スフィンゴシンキナーゼ遺伝子改変マウスにおいて比較検討を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画に従い、研究を進めており、興味深い研究成果が得られている。
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Strategy for Future Research Activity |
妊娠の維持、胎児の発育に対する、シトルリン化の意義について、シトルリン化阻害物質や中和抗体を用いて検討を行う。
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Causes of Carryover |
(理由) 今年度は、他の研究費などもあり、次年度使用額が生じた。 (使用計画) 研究をさらに発展させるため、試薬・消耗品の購入費、動物飼育費などに使用する。
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