2020 Fiscal Year Research-status Report
腸管免疫に影響を与える腸内細菌叢に着目した微小変化型ネフローゼ症候群の病因解明
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19K08287
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Research Institution | Kansai Medical University |
Principal Investigator |
辻 章志 関西医科大学, 医学部, 准教授 (00360256)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | dysbiosis / MCNS / PAN / Lipopolysaccharide |
Outline of Annual Research Achievements |
令和2年度も令和元年度に引き続き4種類の抗菌薬 (amoxicillin、cefotaxime、vancomycin、metronidazole)投与による腸内細菌叢無菌化ラット(無菌化ラット)作成実験を行った。4種類の抗菌薬は合計10日間連日経口投与した。腸内細菌叢を無菌化(非無菌化ラット)しないラットにはリン酸緩衝液を投与した。微小変化型ネフローゼ症候群(minimal change nephrotic syndrome: MCNS)の病変を惹起するpuromycin aminonucleoside (PAN)をラットの項部に皮下注射した後の尿タンパクを定量した。腸内細菌叢の内、酪酸産生菌は腸管内の制御性T細胞を分化誘導することが知られているが、以前の私たちのヒトでの研究結果では制御性T細胞の低下がMCNSの発症あるいは再発と関係している報告をしている。そのため、今回の動物実験の結果でも、酪酸産生菌も殺菌されることが予測される無菌化ラットの方が、非無菌化ラットと比較してPAN投与後の尿タンパク量は多いと考えていた。しかし、実際には無菌化ラットの尿タンパク量は非無菌化ラットと比較して予想に反して有意に低下していた。予想と反した結果となった原因として、腸内細菌の内、Lipopolysaccharide(LPS)を産生する菌が減少したことによりpodocyte障害が抑制されていると考えた。既報ではLPSは腎糸球体上皮細胞のpodocyteのToll-like receptorを介してpodocyte障害を邪気することが知られている。そこで、LPS を産生する菌であるグラム陰性桿菌を殺菌する抗菌薬であるcefotaximeのみラットに経口投与した。その結果、4種類の抗菌薬を投与した時とほぼ同じ程度、cefotaximeを投与したラットの尿タンパクは非無菌化ラットと比較して低値となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初は4種類の抗菌薬をラットに投与することにより腸内細菌叢のdysbiosisをきたすことがネフローゼ症候群を悪化させると予測していた。しかし、結果は逆の結果となり当初の予定と異なる研究を加える必要性が生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
令和2年度はLPS を産生する菌であるグラム陰性桿菌を殺菌する抗菌薬であるcefotaximeのみラットに経口投与した結果、4種類の抗菌薬を投与した時とほぼ同じ程度、cefotaximeを投与したラットの尿タンパクは非無菌化ラットと比較して低値となった。そこで令和3年度は抗菌薬投与直後のラットの血中LPS(エンドトキシン)濃度あるいはLPS binding protein濃度を測定する。またグラム陰性杆菌を選択的に低下させる抗菌薬を数種類ラットに投与して効率良くLPSの産生量を低下させる抗菌薬を見つける。そして、今後のヒトへの応用を考えて、腸内細菌叢のdysbiosisをきたすことなく、LPSの産生量のみ低下させる抗菌薬投与量を調整してネフローゼ症候群の再発予防として抗菌薬の使用の考慮の根拠となる方法を模索する予定である。
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