2019 Fiscal Year Research-status Report
上皮の癒合破綻によって発症する二分脊椎や口蓋裂などに共通する病因の解明
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19K08291
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Research Institution | Osama Woman's and Children's Hospital |
Principal Investigator |
持田 京子 地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪母子医療センター(研究所), 病因病態部門, 流動研究員 (00834417)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉田 千春 地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪母子医療センター(研究所), 病因病態部門, 主任研究員 (60360666)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 上皮癒合 / マウス / 遺伝子改変マウス / 神経管閉鎖不全 / 先天異常 / 口唇口蓋裂 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、先天疾患である二分脊椎と口蓋裂疾患の発症機序が、同一のメカニズムつまり「上皮癒合の破綻」に起因するものではないか、という仮説を検証する研究課題である。これまで我々の研究成果から、マウスGrainyhead-like3遺伝子(Grhl3遺伝子)を欠失することで将来の皮膚となる表皮細胞の分化、細胞動態に関わる異常が見られ、結果二分脊椎を発症することを明らかにしてきた (Kimura-Yoshida, Mochida et al., 2015,; 2018)。そこで、Grhl3遺伝子欠損マウスを用いて、二分脊椎とは全く異なる組織である、「口蓋」における上皮癒合に異常が見られるのか検証を行った。 本年度は、既に我々が作製している様々な変異アレルを持ったGrhl3遺伝子欠損マウスを用いて、口蓋裂(口唇裂を含む)の発症の有無に関して病理的解析を行った。まず、Grhl3遺伝子の第1エクソンの翻訳開始点に、フレームを合わせてCre-IRES-lacZ cDNA遺伝子を挿入することでGrhl3の発現を消失させたマウスに対し、受精後17.5日目の胎児を回収し検証を行った。さらに、Grhl3遺伝子の第2エクソンを欠損させたマウスに対しても同様な解析を行った。結果、Grhl3遺伝子内の2種類のコーディング領域に対して遺伝子変異を持ったマウス胎児では100%の罹患率で二分脊椎の発症は見られるが、口唇または口蓋裂の形成異常は見られなかった。これら解析は、マウス系統をC57Bl/6マウス(近交系)とCD-1(非近交系マウス)の2系統のマウスを用いて確認を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、現在維持しているGrhl3遺伝子欠損マウスを用いて、口唇口蓋裂の発症の有無を確認できたため。
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Strategy for Future Research Activity |
口蓋の先天奇形の一つに「横口蓋ヒダ異常」がある。横口蓋ヒダとは、硬口蓋に観察される構造で、ヒトでは切歯から第二小臼歯部まで左右非対称に約4条存在する。出生時にはその数が決まり、成長に従って条数や走行に変化はないとされている。一方で、横口蓋ヒダ構造についての発生機序は不明な点が多い。 そこで、本年度では横口蓋ヒダの発生に関して、Grhl3遺伝子欠損マウスを用いて解析を行う。横口蓋ヒダは食物の物性(圧・触感など)を感知する働きをすることが知られており、近年の報告では、FgfシグナルがHedgehogシグナルの乱れによって、ヒダのパターンに異常が見られる事も報告されている(Economou et al., 2012)。そこで、Grhl3遺伝子の口蓋形成における影響についてさらに詳細に理解するために、横口蓋ヒダの形成を検証する。また、胎児期におけるヒダ形成に重要とされている、例えばShhシグナルやFgfシグナルyなどの発現解析も行う。
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Causes of Carryover |
今年度解析に用いた遺伝子欠損マウスは、既に作製済みのマウスであり、それらマウスの繁殖、交配のみで検証できたため、予定の金額を使用することなく、研究計画を終えることが出来た。次年度は、継続してマウスの繁殖・維持を行いながら、各種マーカー解析を行う予定である。
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