2020 Fiscal Year Research-status Report
ヒトパレコウイルス3型の受容体同定と感染重症化機序の解明
Project/Area Number |
19K08294
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
渡邉 香奈子 新潟大学, 医歯学系, 准教授 (80626094)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
齋藤 昭彦 新潟大学, 医歯学系, 教授 (30531389)
樋口 雅也 金沢医科大学, 医学部, 教授 (50334678)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ウイルス受容体 / ヒトパレコウイルス3型 / 蛍光タンパク質発現組換えヒトパレコウイルス3型 / レトロウイルスベクター / cDNAライブラリー |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒトパレコウイルス3型(HPeV-3)は、多くの場合、軽微な胃腸炎や上・下気道炎などをきたす乳幼児感染症の原因ウイルスである。しかしながら、HPeV-3が新生児あるいは早期乳児に感染すると、敗血症様症候群、脳脊髄膜炎などの重症感染症を発症し、4カ月未満児の入院率は7.5人/1,000人である。HPeV3は腸管上皮もしくは気道上皮細胞などに感染すると考えられているが、感染機構、宿主細胞域の全体像、感染の組織特異性および重症感染症を引き起こす分子機構は不明である。 本研究ではHPeV-3のウイルス受容体を同定することによって、宿主細胞域や組織特異性を明らかにする。更に、同定した受容体を発現する動物モデルを樹立し、個体レベルでのHPeV-3感染症の分子機構を解析することにより、新生児において重症化する病態の全容解明を目指している。 令和元年度は、HPeV-3高感受性LLC-MK2細胞から平均1.8kbフラグメントのcDNAライブラリーを作製した。また、このcDNAライブラリーの選別に用いるUnaG(緑色蛍光タンパク質)発現組換えHPeV-3(HPeV-3-UnaG)も作製した。HPeV-3-UnaGは細胞に感染して、ウイルスタンパク質の合成が始まるとEGFPが発現する組換えウイルスである。HPeV-3高感受性LLC-MK2細胞のcDNAライブラリーを1つのプールが約1,000クローンを含むプールとなるように調整し、150プールに分割した。合計約15万クローンのcDNAについてHPeV-3-UnaGを用いて一次スクリーニングを行った。150プールの中から、UnaGの緑色蛍光が観察され陽性となった2つのライブラリープールを選別した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
一次スクリーニングで得られた2つの陽性プール(No. 79、No. 142)のうち、1つのプール(No. 79)について、二次スクリーニングを行った。No. 79ライブラリーについて1つのプールが約1,000クローンのcDNAを含むように調整し、100プールに分割した。合計約10万クローンのcDNAについてHPeV-3-UnaGを用いて二次スクリーニングを行った。二次スクリーニングでは陽性プールを5~10個程度選別できると予想していたが、UnaGの緑色蛍光が陽性となったライブラリープールはなかった。 一方、HPeV-3受容体遺伝子の単離をCRISPR/ Cas9ヒト全ゲノムノックアウトレンチウイルスライブラリーを用いて試みるグループと共同研究を行っており、23の受容体候補遺伝子が得られた。これらの受容体候補遺伝子のうち、3つのgRNAがすべてランクインした遺伝子が受容体である確率が最も高いと判断し、この遺伝子について受容体であるかどうかの検証実験を行うこととした。
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Strategy for Future Research Activity |
HPeV-3非感受性細胞に受容体候補分子を強制発現させてHPeV-3の感染実験を行う。また、感受性細胞においては受容体候補分子をノックアウトして感染実験を行い、感染価を測定する。さらに、HPeV-3以外のHPeV遺伝子型や近縁のエンテロウイルスについても受容体候補遺伝子発現細胞とKO細胞の感染実験を行い、HPeV-3に特異的な受容体なのか、あるいはHPeVに共通した受容体であるのか、更に広くエンテロウイルスも利用するのかを確認する。ウイルスと受容体候補分子との結合も確認する予定である。
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Causes of Carryover |
本年度の研究計画が順調に遂行でき、641,509円の次年度使用が生じた。この費用は、次年度の実験消耗品の購入費用および論文投稿費用に充てる。
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