2020 Fiscal Year Research-status Report
次世代シークエンスによる包括的な重症感染症リキッドバイオプシー
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19K08298
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
伊藤 嘉規 名古屋大学, 医学系研究科, 准教授 (20373491)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川田 潤一 名古屋大学, 医学部附属病院, 講師 (20532831)
荻 朋男 名古屋大学, 環境医学研究所, 教授 (80508317)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 次世代シークエンス / 病原微生物 / 重症感染症 / リキッドバイオプシー |
Outline of Annual Research Achievements |
小児期には急性脳炎・脳症、劇症肝炎・急性肝不全、心筋炎などの重篤な感染症が存在する。基礎疾患や免疫抑制剤の投与により易感染性を示す患者は、血流感染症などの重症感染症のリスクがある。これら重症感染症では、病原微生物は幅広く、通常は複数の検査により病原微生物同定を試みる。重症感染症では、早期診断と適切な抗微生物薬の選択が予後を左右する。次世代シークエンス法は、一度のアッセイで、1,000万~10億程度のリード(DNA・RNA断片のシークエンス数)を得ることができ、臨床検体中の核酸断片を網羅的・定量的に解析できる。さらに薬剤耐性も同時に解析可能である。重症感染症における病原微生物診断は現状では不十分であり、多くの症例で診断できれば、抗微生物薬の効率的な使用が可能になり、感染症診療に大きな進展が予想される。次世代シークエンス法を臨床応用できる基盤的研究を推進し、重症感染症の病原を早期に網羅的に診断できる方法を開発する。 2020年度は、150bpの断片配列を読むショートリード法、網羅的な解析であるショットガン法の組み合わせにより、血液培養・核酸検出法に比べて、病原微生物検出における次世代シークエンスの優位性を引き続き検討した。シークエンスデータの解析は、2019年12月にウェブ上で公開した解析パイプライン「PATHDET」(新規に開発)を使用した。発熱性好中球減少症(FN)の病原微生物確定診断例は10~20%であり、多くは原因不明である。10例の血液培養陽性例を含む112例のFNにおける次世代シークエンス法による病原微生物の診断は、20.6%であった。他に、原因微生物不明感染症例の解析では、2例の髄膜炎症例において、培養検査では同定できなかったB群レンサ球菌を検出した。次世代シークエンスの病態解析への応用を目指し、EBウイルス難治性疾患におけるリンパ球のシングルセル解析に着手した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2020年度は発熱性好中球減少症の血漿検体を解析した結果を報告すると共に、原因微生物不明症例の解析も行い、2例の髄膜炎症例において、病原と疑われる細菌を検出した。ショートリード・ショットガン法の病原微生物次世代シークエンス診断法の診断法としての優位性をさらに検証した。重症感染症の血液中リンパ球の次世代シークエンス・シングルセル解析を、EBウイルス関連血球貪食性リンパ組織球症で開始し、ウイルス感染細胞の性状や免疫反応、炎症反応の性質について、検討を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
次世代シークエンスを用いた病原微生物診断に関しては、ロングリードシークエンス法の優位性を検討すると共に、解析パイプライン「PATHDET」のアップデートを行う。 重症感染症の血液・髄液検体のcell-free DNAおよびmiRNAの分離・解析を進め、感染症の急性期に病態把握につながる結果が得られないか、引き続き検討する。重症感染症におけるリンパ球検体を用いたシングルセル次世代シークエンス解析により、免疫応答を多面的に解析できないか、検討する。
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Causes of Carryover |
シングルセル・次世代シークエンス解析の臨床検体が予想より少なかったため、次年度へ試薬類の購入を延期したため。
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Research Products
(3 results)