2019 Fiscal Year Research-status Report
川崎病急性期におけるHMGB-1の制御を目的とした分子標的治療の開発
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19K08302
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
上野 健太郎 鹿児島大学, 医歯学域鹿児島大学病院, 講師 (20644892)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
河野 嘉文 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 教授 (20260680)
野村 裕一 独立行政法人国立病院機構鹿児島医療センター(臨床研究部), 小児科, 研究員 (90237884)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 川崎病 / DAMPs |
Outline of Annual Research Achievements |
治療前川崎病患児血清を用い冠動脈内皮細胞を刺激したところ、内皮細胞は壊死性変化を起こし代表的DAMPsである High mobility group box-1(HMGB-1)シグナルが活性化、細胞質内 ERKのリン酸化、NF-kBの核内移行を促進し、IL-1β, TNF-α, IL-6の発現を亢進させることを明らかにした。また、これらの変化は抗HMGB-1抗体投与で抑制されたことから、HMGB-1シグナルは冠動脈病変発症に寄与している可能性を見いだした。次に in vitroで LCWE(Lactobacillus casei wall cell extract)川崎病モデルマウス(Schulte DJ et al. J Immunol 2009、Arditi M. Int Kawasaki Disease Symp 2015)を用い実験を行った。4週令雄の C57BL/6マウスに LCWE 1,000μg腹腔内投与を行い、1)コントロール群(PBS)、2)LCWE群、3)LCWE+免疫グロブリン(IG:1g/kg)群、4)LCWE+(IG:1g/kg)+抗HMGB-1抗体(2mg/kg 隔日投与)群、に分類し4週間飼育、安楽死後のマウスから血液採取および心組織を採取し、蛋白抽出、RNA抽出、病理組織標本を作製した。病理組織では冠動脈のHE染色、Evans-Green染色(動脈壁弾性線維)、CD68染色(マクロファージ)、αSMA染色(平滑筋細胞)およびHMGB-1染色を行った。2)群ではマクロファージの集簇を伴う冠動脈炎が惹起され、内膜・平滑筋細胞は肥厚し、弾性線維の破壊がみられ、HMGB-1が濃染していた。3)、4)群ではこれらの組織変化は抑制された。現在、細胞溶解物から接着分子、炎症シグナルの評価、rt-PCRを用いて血清サイトカインの評価を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の申請時に予想される結果に沿った実験結果を示しており、in vivoでも予想されている急性期の冠動脈内皮細胞の変化を確認することができている。
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Strategy for Future Research Activity |
再現性の確認をしつつ、LCWEマウスの血清サイトカイン測定、細胞中の蛋白溶解産物、RNAを用いたシグナル伝達機構を評価していく。本研究では川崎病血管炎におけるDAMPs制御機構の解明およびDAMPsを標的とした分子標的治療を念頭に考えており、臨床応用の前段階として抗HMGB-1投与やHMGB-1中和作用を有するトロンボモジュリンに着目し、その有用性を検証していく。HMGB-1を標的とした分子標的治療の有用性を示し、冠動脈の組織障害を最小限に抑えることができれば、急性期の冠動脈病変や遠隔期の急性冠症候群発症を予防する新たな治療戦略になりうると考えている。
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Causes of Carryover |
研究は概ね順調に進んでいる。生じた次年度使用額は引く続き 2020年度に実施予定であった本実験の再現性の確認、および細胞溶解物から接着分子、シグナル伝達物質の測定、rt-PCR/ELLISAを持ちた血清サイトカインの測定に使用する予定である。 また新型コロナウイルス感染症の拡大による影響で、予定していた国際学会に参加することができなかったことも次年度使用額が生じた一因である。
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