2019 Fiscal Year Research-status Report
Comprehensive research in morphogenesis of the cardiac outflow tract
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19K08308
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Research Institution | Yamazaki University of Animal Nursing |
Principal Investigator |
富田 幸子 ヤマザキ動物看護大学, 動物看護学部, 教授 (40231451)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
栗原 裕基 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 教授 (20221947)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 心臓流出路 / 形態形成 / 三次元立体構築 / 神経堤細胞 / 原羊膜壁側中胚葉細胞 / ウズラ-ニワトリキメラ / 分子メカニズム |
Outline of Annual Research Achievements |
心臓流出路は心筋と血管平滑筋をつなぐ連結部で、この部位の異常は先天性心疾患の中で最も頻度の高い疾患である。心臓流出路を形成する細胞は、二次心臓領域細胞、心臓神経堤細胞(後耳胞神経堤細胞)、前耳胞神経堤細胞、原羊膜壁側中胚葉細胞、心外膜前駆細胞などあり、様々な細胞が関与している。本研究の目的は、胎生期の心臓流出路を構成する細胞群の単一細胞レベルの解析、各細胞間の相互関係及び分子メカニズムを検討し、心臓流出路における形態形成過程を包括的に3次元で捉え全体像を明らかにするシステムを構築することである。 本年度は、発生期心臓に流入する神経堤細胞及び原羊膜壁側中胚葉細胞の単一細胞トランスクリプトーム解析、ウズラ-ニワトリ間の同所キメラ移植による細胞系譜追跡などにより、以下の結果を得た。 ①マウス胎生期の心臓流出路において、神経堤細胞は初期に骨格系前駆細胞様の表現型を示し、冠動脈や大動脈平滑筋細胞、大動脈肺動脈弁の間質細胞など多様な細胞に分化することが明らかになった。②心臓内の神経堤細胞の分化過程に関与する転写因子ネットワークが示唆された。③羊膜を形成する壁側中胚葉にはヘマンジオブラスト様の心血管系前駆細胞が含まれ、胚内に流入して心臓流出路などからのシグナル分子により心筋や血管内皮に分化することが示された。また、組織切片画像から三次元立体構築を行うソフトウェアAmiraによりニワトリ胚の心臓を各ステージで立体的に可視化し、上記の細胞群をはじめとする心臓流出路構成細胞の時空間的関係とシグナル応答解析のプラットホームを構築した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要で述べたように、胎生期心臓流出路を構成する細胞群の単一細胞レベルの解析により、発生期心臓に流入する神経堤細胞及び原羊膜壁側中胚葉細胞の分化系譜が明らかになってきた。また、ウズラ-ニワトリキメラ胚作製実験によって、これらの細胞の空間的配置の変化が明らかになるとともに、新たに血球系細胞との相互作用も示唆され、新しい展開が見込まれている。Amiraによる三次元構築はこれらの細胞群の空間的位置関係や相互作用解析のためのプラットホームになるとともに、アトラスとしてのデータベース的価値も高い。さらに、本研究の代表者が分担研究者として行っている研究(基盤(A)19H01048)では10X Visiumを用いた空間的トランスクリプトーム解析が予定されており、本研究と相補的に研究を進めることも可能である。以上の結果は次年度以降の研究計画の基盤を充実させるものであり、期待通りに研究が進展したと評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
単一細胞RNA-seqによって推定された分化系譜を、系譜特異的Cre発現マウスで追跡して検証するとともに、Amiraによる三次元構築データ及び平行して進めている10X Visiumによる空間的トランスクリプトーム解析と対応させながら、各細胞系譜の組織内分布や細胞間相互作用を解析する。前年度明らかになった骨軟骨前駆細胞様神経堤細胞からの冠動脈平滑筋や大動脈弁間質細胞への分化に関しては、系譜特異的Cre発現マウスやニワトリ胚操作によってその誘導機構を中心に検討する。これらの解析から推測される細胞間のシグナル応答や各系譜の分化を制御する遺伝子ネットワークの役割については、神経堤細胞株や神経管の外植片培養、鶏卵尿漿膜(CAM)上での器官培養系を用いるなどin vitroでの評価系の構築を試みる。また、胎生期心臓流出路を構成する細胞との相互作用が新たに浮上した血球系の細胞群についても、鳥類キメラ胚作製や神経堤除去胚作製などを用いて、相互作用が心臓流出路発生にどのような役割を果たしているのかを明らかにする。
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Causes of Carryover |
次年度使用額51,054円は、計画時よりも安価に物品を入手できたため当該年度助成金が残金として残った。翌年度分として請求した助成金と合わせて消耗品を購入する予定である。
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