2019 Fiscal Year Research-status Report
TRECK法によるミクログリア除去モデルを用いた脱髄性疾患とてんかんの病態解明
Project/Area Number |
19K08311
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Institute of Medical Science |
Principal Investigator |
佐久間 啓 公益財団法人東京都医学総合研究所, 脳発達・神経再生研究分野, プロジェクトリーダー (50425683)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ミクログリア / ジフテリア毒素 / TRECK法 / 小児神経疾患 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、小児神経疾患のマウスモデルの様々な病相においてTRECK法を用いてミクログリアを除去することで、ミクログリアの病相特異的な役割を明らかにすることである。TRECK法とはマウスの特定の細胞にジフテリア毒素受容体(DTR)を発現させ、ジフテリア毒素(DT)を投与することで標的細胞を死滅させるシステムである。そこでミクログリア特異的にDTRを発現するマウスを作成した。 最初に組織特異的にDTを発現させるためのノックイン(DTR-KI)マウスの作成を試みた。Rosa26遺伝子領域にloxp配列で挟んだSTOP カセットを挿入し、その下流にDTR (ヒトHB-EGF)遺伝子とTd tomato遺伝子を挿入したtargeting ベクターを作成した。このベクターをRENKA (B6N) ES cellsに電子穿孔法により導入し、得られた190コロニーのうち陽性クローン4つをCD1マウスに移入した。キメラマウスまでは順調に得られたが、F1ヘテロマウスの妊伃性が低く、かつKI/KIマウスがなかなか得られなかった。最終的に系統維持に十分な数のDTR-KIマウスが得られたのは2020年1月になってからであった。 ミクログリア特異的発現を誘導するCreマウスとしてはCX3CR1-CreERT2マウスを用いた。DTR-KI雌マウスとCX3CR1-CreERT2雌マウスを交配し、2月にCX3CR1-iDTRマウスが9匹出生した。日齢14と15にtamoxifen 1mg/匹を皮下投与し、生後6週でDTを投与する予定であった(ミクログリア以外に血球系細胞の一部もCX3CR1を発現するため、tamoxifen投与後に1ヶ月の間隔(血球系のturnoverが完了しミクログリアのみにCre発現が残存するまでの期間)を開ける必要がある)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
DTR-KIマウス作成過程で、原因不明のヘテロマウス妊伃性低下により、十分な数のDTR-KIマウスが得られた時期が予定よりも大幅に遅延した。その後CX3CR1-CreERT2マウスとの交配は順調に進んだが、CX3CR1-iDTRマウスにtamoxifenを投与した時点で、新型コロナウイルス感染症蔓延の影響により全ての動物実験を行うことができなくなった。このため2020年3月の時点で、TRECKシステムに関する予備的検討が完了していない。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度はまずDTR-KIマウスとCX3CR1-CreERT2マウスを交配して得られるCX3CR1-iDTRマウスにtamoxifenおよびDTを投与して、ミクログリアが選択的に除去されることを確認する。同時にtdTomatoを指標としてミクログリアにおけるDTRの発現を組織学的に確認する。これらの予備的検討が終わり次第、小児神経疾患の動物モデル(実験的自己免疫性脳脊髄炎、pilocarpineによるけいれん重積)に対するミクログリア除去による効果の検討を開始する。しかし新型コロナウイルス感染症の影響により現在は遺伝子改変マウスのコロニーを大幅に縮小しており、動物実験を再開できたとしても、これらの実験を安定的に実施できるようになるまでには3~6ヶ月の期間を要すると考えられる。このため2020年度も実験計画の大幅な遅延が予想される。
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Causes of Carryover |
目的のCX3CR1-iDTRマウスが得られるのに予想以上に時間を要したため、マウスモデルを用いた本格的な実験を開始することができず、必要な物品が予定より大幅に少なくなった。 次年度は遅れている研究計画を順次進めるために、試薬や動物飼育関連のための費用を支出する予定である。
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