2020 Fiscal Year Research-status Report
CDC42異常症発症メカニズムの解明と治療薬の探索
Project/Area Number |
19K08314
|
Research Institution | Osama Woman's and Children's Hospital |
Principal Investigator |
渋川 幸直 地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪母子医療センター(研究所), 分子遺伝病研究部門(旧代謝部門), 主任研究員 (90393264)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 希少疾患 / CDC42 |
Outline of Annual Research Achievements |
293細胞を用いた解析からTKS変異型CDC42は膜移行が促進しており、高活性型として細胞内に存在している事が明らかとなった。またこの高活性型はその抑制因子であるRho-GDIとの会合が阻害されている事が原因である事を見いだした。 血小板分化過程についてはTKS変異体をMEG01細胞に過剰発現させて巨核球への分化を誘導し、血小板の産生量を測定したところ、臨床症状と同様に変異体を発現させた細胞では血小板の産生量が大きく減少している事を確認した。また細胞質の伸張を伴う巨核球のproplatelet形成は血小板の産生に重要なステップであるが、TKS変異体発現細胞では異常なアクチン集積が認められ、細胞質の伸張が不十分であることを見いだしている。 CDC42の異常シグナルを正常化するために直接の阻害剤であるML141とR-ketorolacおよび脂質合成経路の阻害剤であるスタチンやビスフォスフォネート製剤、GGTIなどの検討を行ったところ、ML141とR-ketorolacおよびGGTI-298はTKS変異体発現によって低下した血小板産生量を野生型レベルまで回復させる事が確認された。スタチンやビスフォスフォネート製剤は変異型の過剰な膜移行を抑える事は出来たが低下した血小板産生量を回復させる事ができなかった。これらの結果は現在投稿中である。 疾患特異的iPS細胞を用いた分化モデルの樹立であるが、従来ではEBによる分化法が主流であったがTKS変異由来iPSCでは十分な大きさのEBが形成されずその後の分化が著しく低下していた。このために我々はHPCへの分化を介してMK cellへの分化を誘導し、そこから血小板産生を誘導する新規の分化法を樹立した。この方法ではTKS由来iPSCにおいて分化するMK cell数が少なく産生する血小板数も減少していることが明らかとなった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
293細胞を用いた解析でTKS変異型の異常シグナルがRho-GDIとの会合阻害による膜移行の促進であることを明らかにした。MEG-01細胞を用いた解析では臨床症状と同じく血小板産生量が低下している事を確認し、疾患モデル細胞として利用出来る系を立ち上げた。更に治療薬の探索についてはTKS変異型CDC42が高活性である事から直接の阻害剤を検討したところ血小板産生を効果的に回復させる薬剤を複数見つけた。 疾患特異的iPS細胞を用いた解析ではEB形成を経由した従来の分化法では初期段階で解析困難なレベルであったため新たな分化誘導法を構築する必要があった。HPCを介してMK cellまでの分化方法は既に確立、報告されているため、ここからMK cellのproplatelet1形成と血小板産生までのステップを完成させた。MEG-01細胞のモデル系と同様に疾患特異的iPS細胞でも産生される血小板量は減少している事を確認し現在はMK cellから血小板産生に至るステップやHPCへの分化ステップ、HPCからMK cellへと至る複数のステップにおいて上記阻害剤の効果を検討している段階にある。 以上のことより細胞レベルでモデル系を培養細胞とiPS細胞で立ち上げ、治療薬の候補を選定した。in vivoへの更なる研究の発展を可能にしたと考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
MEG-01細胞を用いた解析に関してはほぼ完了しており現在投稿中である。iPS細胞を用いた解析は幾つか解消すべき疑問点が新たに生まれている。第一に分化誘導したMK cellからの血小板産生量の低下を回復させる阻害剤の適正濃度であり、第二にTKS変異細胞でのHPCの減少である。前者はほぼ完了しており、次年度中に解析が終了する。後者であるが、HPCからは二種の前駆細胞(LymphoidとMyeloid)に分岐すると考えられているが、TKS由来細胞では成熟したMK細胞数も減少している事からLymphoidへとシフトしていると予想している。そこで今後はこの仮説を検証するために各マーカー抗体を用いたFACS解析にて検証を行い減少したMKへの分化を回復させることが可能か検討を進める
|
Causes of Carryover |
iPS細胞を用いた実験に充てる為に多少の余裕を残した結果次年度使用額が生じている
|
Research Products
(1 results)