2020 Fiscal Year Research-status Report
薬剤耐性化が進むK1大腸菌の系統解析とワクチン標的分子の探索
Project/Area Number |
19K08325
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
藺牟田 直子 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 助教 (00643470)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
児玉 祐一 鹿児島大学, 医歯学域鹿児島大学病院, 講師 (20535695)
西 順一郎 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 教授 (40295241)
大岡 唯祐 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 准教授 (50363594)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | K1莢膜遺伝子 / 基質特異性拡張型βラクタマーゼ / ESBL / CTX-M / 下痢原性大腸菌 / 腸管凝集性大腸菌 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年は2019年の139株を対象に病原遺伝子、基質特異性拡張型βラクタマーゼ(CTX-M遺伝子)の検出、CTX-M型別を行い、2001~19年のCTX-M遺伝子保有株(CTX-M株)のST131 Cladeを検討した。2019年は、K1莢膜遺伝子保有株(K1株)30.4%、下痢原性大腸菌(DEC)の腸管凝集性大腸菌(EAEC)4.4%、腸管病原性大腸菌(EPEC)2.2%であった。CTX-M株は5.9%、K1莢膜遺伝子保有CTX-M保有株(CTX-M/K1)0.7%で、CTX-M型は14と27、ほぼphylogroup B2であった。 2003~19年のCTX-M株は3.8%(357/9525)、CTX-M遺伝子保有のEAEC11.5%、EPEC0.8%で、EAECは2003年に出現し増加、16年以降の頻度は低下し、EPECは2012、13年に検出された。CTX-M/K1は11.8%で経時的に検出されO1・O18が多かった。ST131は50.4%、2003年に出現し14年以降50%前後で継続的に検出された。O25、CTX-M-14 、phylogroupB2が多く、2008年までClade BのEAECが多かった。その後CladeはC1に移行し11年以降C1-M27が増加した。K1株は11.6%、全てphylogroupB2、2株がNew Clade、O25などであった。ST131以外のK1株はO1・O18、phylogroup B2が多かった。 以上から、2010年以前のCTX-M株はClade B/CTX-M-14/EAEC/O25/ST131が多く、その後Clade の移行によりDEC/CTX-M株は減少したと考えられる。またCTX-M型の推移(14→27)は、変異ではなくCladeの移行によることが示唆された。一方、New Clade/ST131/K1株出現が明らかになった。CTX-M/K1は一定頻度で継続的に検出されており、New Cladeへの移行、さらにDEC病原遺伝子獲得による病原性の変化など引き続きサーベイランスと監視を行う必要があると考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、2019年に鹿児島県で収集した小児下痢症患児由来大腸菌に加えて、これまでに検出したCTX-M遺伝子保有株について解析することができた。これにより、K1莢膜遺伝子保有株の中にST131大腸菌の新しいCladeが含まれること、また、このCladeの移行によりCTX-M遺伝子保有株の病原性大腸菌の病原遺伝子保有状況が変化したことが明らかになったことは課題の遂行にたいへん有意義であった。しかし、これらの解析に時間を有したことやPCRやシークエンスを行うための物品や試薬の入荷が滞ったことなどにより2020年度に収集した菌株の十分な解析ができなかったこととさらに研究を進めることができなかったことが今年度の課題であった。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに収集されたESBL産生菌、下痢原性大腸菌に加えて、2020年に収集された便由来株、ならびに2018年~2020年に収集された血液由来株からK1遺伝子保有株とESBL産生菌をスクリーニングし、病原遺伝子や薬剤耐性遺伝子を検討し、MLSA(multilocus sequence analysis)を行う予定である。MLSAによる系統解析の結果から代表株を選択、血清殺菌抵抗性の比較や食菌作用の比較などを検討し、ワクチン標的分子の検討の基盤とする。
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Causes of Carryover |
今年度は、2019年に鹿児島県で収集した小児下痢症患児由来大腸菌に加えて、これまでに検出したESBL産生菌について一部解析することができた。しかし、PCRやシークエンスに使用する物品や試薬の入荷が滞ったこと、解析に時間を有したために収集した検体と2020年に収集した菌株の解析が十分にできなかったこと、また、学会発表などの成果の場がなかなか作れなかったことが今年度の課題であった。上記菌株の遺伝子解析や系統解析に要する費用そして成果の発表として使用する予定である。
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Research Products
(5 results)