2020 Fiscal Year Research-status Report
Development of novel drugs for tuberous sclerosis complex
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19K08334
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Institute of Medical Science |
Principal Investigator |
久恒 智博 公益財団法人東京都医学総合研究所, 精神行動医学研究分野, 主席研究員 (10321803)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | TSC / 細胞内カルシウム / 樹状突起スパイン |
Outline of Annual Research Achievements |
結節性硬化症(Tuberous Sclerosis Complex: TSC)は、過誤腫と呼ばれる良性腫瘍ができる全身性疾患である。TSC患者は、乳児期から始まる難治性のてんかんや知的障害、自閉症などの神経症状を呈することが知られている。しかし神経症状に対する治療薬は存在しないため、本研究はTSCの神経症状の治療薬を開発することを目指している。 前年度までに、CRISPR-CAS9を用いてTSC2変異型ヒトiPS細胞を作製し、それを神経細胞に分化させて長期培養する術を確立した。またAAV-Syn-GFPを神経細胞に感染させ、TSC2変異型ヒト神経細胞(iPS-Tsc2 neuron)の樹状突起スパインの形態異常を明らかにした。また、神経細胞の自発的発火の頻度や同調性をカルシウムイメージング法を用いて3ヶ月に渡り測定し、iPS-Tsc2 neuronにみられる特徴的な活動パターンを明らかにした。 そこで本年度は、前年度明らかにしたiPS-Tsc2 neuronの異常なスパイン形態や神経活動パターンに対してRheb阻害剤やmTOR阻害剤が及ぼす効果を検討した。その結果、Rheb阻害剤はmTOR阻害剤に比べ、iPS-Tsc2 neuronの樹状突起スパインの異常な形態をより野生型に近づけることがわかった。一方、iPS-Tsc2 neuronにみられる特徴的な神経活動パターンにはRheb阻害剤の効果はみられず、mTOR阻害剤が有効であるとがわかった。 さらにiPS-Tsc2 neuronの特徴的な神経活動パターンを生み出す分子メカニズムとして、細胞内カルシウムの制御機構の異常が関わることを明らかにすることができた。この細胞内カルシウムの制御機構の異常はラパマイシン依存的な現象であること、また活性化型のRhebを野生型神経細胞に強制発現させることで誘導できることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度、iPS-Tsc2 neuronの異常なスパイン形態にRheb阻害剤が及ぼす効果を明らかにし目標を達成した。さらにiPS-Tsc2 neuronに特徴的な神経活動パターンを生み出す分子メカニズムとして、細胞内カルシウムの調節機構の異常を示唆するデータを得ることができた。これらのデータを論文にまとめ現在リバイス中である。よって研究は順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度はiPS-Tsc2 neuronの特徴的神経活動パターンを生み出す分子メカニズムをより詳細に解析する。また、TSCの精神症状の定量的な評価が今後必要と思われるため、iPS-Tsc2 neuronや神経前駆細胞の培養上清を用いてTSCの神経症状と関わるバイオマーカー探索を進めていく。現時点でTSC型細胞のエキソソーム内に存在するmiRNAの量的な変化を明らかにしており、この現象をより詳細に調べていく。
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Causes of Carryover |
コロナのため、学会がオンラインになり旅費の支出がなくなったため次年度に繰り越した。 消耗品費に使用予定である。
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Research Products
(1 results)