2020 Fiscal Year Research-status Report
CMV病原性に関与する細胞因子を介した先天性CMV感染症における神経病態制御
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19K08335
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Research Institution | National Center for Child Health and Development |
Principal Investigator |
中村 浩幸 国立研究開発法人国立成育医療研究センター, 免疫アレルギー・感染研究部, 室長 (70256866)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | サイトメガロウイルス / CMV / 先天性CMV感染症 / 感音性難聴 / 精神発達遅滞 / 母子感染 / ゲノムワイドスクリーニング |
Outline of Annual Research Achievements |
先天性サイトメガロウイルス (CMV) 感染症では、先天感染児において感音性難聴や小頭症、精神運動発達遅滞などの重大な神経・感覚器障害を合併する場合があり、先天感染児の予後に重大な影響をおよぼし得る。そのため、これらの合併症の予防法や診断・治療法の確立は重要課題と言える。 本研究は、当該疾患に合併する神経・感覚器障害の発症メカニズムの解明を目指すとともに、発症を抑制するための新たな方法につながる知見を得ることを目的とする。 ウイルス病原性の発現にはウイルス因子に加えて細胞因子の関与が重要と考えられる。本研究では、CMV神経病原性に関与する細胞因子をshRNA発現ライブラリーを用いたゲノムワイドスクリーニングによって同定し、shRNAが標的とする細胞因子を介したCMV神経病原性の発症メカニズムを明らかにするとともに、CMV病原性の抑制につながる治療標的分子を想定して知見を得ることを目指している。 これまでの研究で、ヒト神経系培養細胞へshRNA発現ライブラリーを導入するとCMV病原性が低下する細胞が出現することを見出した。次に、同定された細胞に導入されているshRN列を明らかにすることで、shRNAが標的とする細胞因子を同定した。本年度は、これまでに明らかになっているshRNAについて、shRNAを単独で神経系細胞へ再導入した細胞を作製し、CMV病原性抑制の有無を評価・確認するための実験を進めた。その結果、shRNAの一部についてCMV病原性抑制効果を発揮する可能性が高いことが確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに得た結果として、(1) ヒト神経系細胞株に対してshRNA発現ライブラリーを導入した細胞ライブラリーを樹立した、(2) 細胞ライブラリーの中からCMV病原性発現が低下している細胞を抽出した、(3) 抽出した細胞に導入されているshRNA配列を同定した。 本年度は、ゲノムワイドスクリーニングによって同定された多数のshRNAの中から、CMV病原性発現の抑制と関連するshRNAを絞り込んだ上で、病原性抑制効果を確認する実験を進めることができた。複数のshRNAについて、ヒト神経系細胞へ個々のshRNAを導入した神経系細胞を新たに樹立し、その細胞においてCMV病原性が抑制されるか確認実験を行った。その結果、導入したshRNAの中からCMV病原性の抑制に寄与するshRNAがあることが確認できたことから、当初の実験計画に沿った進展が見られた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに同定されたshRNAおよび細胞因子の情報に基づき、CMV病原性発現にどのように細胞因子が関与しているかを明らかにする目的で、shRNA発現細胞にCMVを感染させた後、CMV感染感受性の変化、CMV遺伝子産物の発現レベルの変化、CMV感染にともなう細胞障害性の変化、などについて解析を進める。 同定された細胞因子が治療標的分子になり得るかを明らかにするために、細胞因子の発現抑制が神経系細胞の生存や増殖に悪影響をおよぼすか否かについても検討を進める予定である。
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Causes of Carryover |
本年度は、実験に使用する試薬・消耗品類の有効活用により使用額を軽減できた。次年度は、生化学的解析に試薬類の新たな購入が必要と予想されるため、それらの購入に助成金を活用する予定である。
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