2019 Fiscal Year Research-status Report
EBウイルス感染による細胞不死化制御機構の解明と不死化阻害薬の開発研究
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19K08336
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Research Institution | National Center for Child Health and Development |
Principal Investigator |
今留 謙一 国立研究開発法人国立成育医療研究センター, 高度感染症診断部, 部長 (70392488)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | EBウイルス / がん化阻害薬 / CD40シグナル |
Outline of Annual Research Achievements |
Epstein-Barr virus (EBウイルス:EBV)は移植医療後のリンパ増殖症 (PTLD: Posttransplant lymphoprolifirative disorder)を引き起こす代表的なウイルスである。PTLDは、小児の臓器移植後に発生する悪性腫瘍の90% 以上を占め、移植医療成績を左右する重要な合併症である。PTLD発症は成人よりも10倍以上小児が多く、その予防と治療法の確立は急務である。現在、EBVに対する抗ウイルス薬はなく対処療法が主な治療になり、骨髄移植を選択しなくてはいけない症例も少なくない。これまでCD40シグナルがEBV感染の不死化に重要な役割を果たしていることは報告されていたが、感染後どの時期にCD40シグナルが不死化に関わっているかについては明らかにされていなかった。本研究によりCD40シグナルを標的とする不死化阻害薬が開発され、その効果的阻害法が確立されれば、これまで研究されてこなかったPTLD発症予防につながる治療薬・治療法の開発に結びつと考えている。 本研究ではヒト化マウスを利用し、PTLD発症の鍵となるEBV感染細胞の不死化(がん化)制御機構の解明と不死化阻害薬の開発を目指し、PTLD発症予防法の確立を目標とする。これまで申請者らはCD40阻害剤(CD40Ig)を作製し、CD40LとCD40 の相互作用を阻害し不死化効率の低下を見出した。CD40IgはCD40の細胞外ドメイン領域とIgGのFc領域を融合させた融合タンパク質である。 本年度は(1)CD40Igの大量作製系の確立(2)CD40Ligand(CD40L)Igの大量作成系の確立 を実施した。具体的には、それぞれHis-tag融合CD40IgないしCD40LIg発現ベクターの作製を行い、ヒト細胞Expi293に遺伝子導入し、培養上清中の分泌型His-tag融合CD40IgないしCD40LIgタンパク質を回収精製する系を確立した。現在回収率を上げるために細胞培養培地の改良と評価を行なっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は(1)CD40Igの大量作製系の確立(2)CD40Ligand(CD40L)Igの大量作成系の確立を目指し進めてきた。それぞれの目的融合タンパク質を培養上清中に産生させる発現ベクターを作製し、細胞へ遺伝子導入を実施した。培養上清中に分泌されたCD40Ig,CD40LIgを回収・精製し阻害効果を検討した。結果、阻害力価は十分あり、感染細胞の不死化(がん化)阻害効果を示した。当初の計画通りに進められている。
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Strategy for Future Research Activity |
CD40Ig,CD40LIgの大量産生系の確立と上清中の目的タンパク質を回収・精製し阻害効果を実証した。当初の予想よりも目的タンパク質の回収率が低いことから細胞培養培地の改良を進めている。また、目的タンパク質発現ベクターの改良も合わせて進めている。活性を失うことなく、回収率を高めることが次年度の目標である。
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Causes of Carryover |
COVID19により試薬および消耗品の一部が期日までに購入できず、予定していたスケールで実施できなかったため。スモールスケールにし予定されていた研究計画を遂行できたが、COVID 19の影響が縮小し、試薬等の購入が出来次第スケールアップし目的タンパクの大量産生・精製を実施し検討していく。
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