2020 Fiscal Year Research-status Report
ヒト大脳オルガノイドを用いたダウン症の早期アルツハイマー型認知症の治療薬開発
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19K08344
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
粟屋 智就 京都大学, 医学研究科, 特定助教 (20589593)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | iPS細胞 / ダウン症 / 認知症 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成31年度/令和元年度の研究実施状況報告書に記載の通り,既に21番染色体数以外のゲノム背景の均質な遺伝学的等質細胞株 1組(欧米人細胞バンク由来株 1株、および当該株の染色体数の自然修復株 1株),日本人ダウン症者由来iPS細胞株 3株、欧米人健常対照者由来iPS細胞株 201B7,409B2,日本人健常対照者由来iPS細胞株を用いた分化誘導を実施し,DYRK1A遺伝子,APP遺伝子の発現解析を行った。令和2年度はCOVID-19拡大による実験の中断があったが,9月には実験を再開し,網羅的遺伝子発現等の解析を進めた。昨年度報告書にも一部記載の通り,対照群とダウン症群における遺伝子発現変動に加えて,人種間や細胞株間での遺伝子発現変動とみられる差異が多く検出され,細胞株毎の神経細胞-星状膠細胞の割合や分化成熟度のばらつきが解析の障壁となっているため,遺伝子導入による強制的分化誘導法を導入することとし,予備的検討を行なった。長期間の培養を要する大脳オルガノイドについては一部の作成を完了し,免疫染色等による解析を進めている。一方,当初予定していたHHVによる感染実験についてはCOVID-19拡大により研究協力者のエフォート配分が困難となったこと,およびHHV感染のアルツハイマー病様病態への関与に対する疑義などから実施を断念し,研究計画調書に記載した通り,代替計画としての免疫担当細胞との共培養による病態解析を進めるべく,マクロファージ/ミクログリアの分化誘導系の構築を行なっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
上記に記載の通り,COVID-19の感染拡大による実験中断,および研究協力者のエフォート配分が困難になったこと,HHV感染のアルツハイマー病様病態への関与に対する疑義などから,当初計画におけるHHV感染実験を中止した。また,iPS細胞の品質管理においてダウン症iPS細胞に追加の染色体異常が生じていたことから,サブクローニングを実施して正常株,トリソミー21株,および追加の染色体異常株を分離するのに時間を要した。
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Strategy for Future Research Activity |
サブクローニング後の細胞を用いた実験は既に進行中であり,令和3年度に二次元培養,および三次元培養を用いた病態解析データの取得を完遂することは十分に可能である。また,トリソミー21株で染色体異常の自然修復が生じることは従来から報告されているが,iPS細胞の品質管理において追加で生じた染色体異常にもいくつかの特徴が見られ,新たな研究テーマとしての可能性も考えられた。近畿地方では再びCOVID-19による緊急事態宣言が発令されることとなり,再度の研究中断を余儀なくされる可能性も出現してきたが,2D法/3D法によるDYRK1A遺伝子、APP遺伝子発現、ストレスマーカー解析等、短期的に実施できる内因性病態の検討を着実に進め,当初の目的であるダウン症者における急激退行症の病態を明らかにする。
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Causes of Carryover |
昨年度の研究実施報告書に記載の通り,平成31/令和1年度の実施項目のうち,本研究計画以外の研究計画とも共通している予備実験を所属施設の運営費および奨学寄附金等により賄った。その後のCOVID-19による実験停止期間があったため,全額を令和2年度中に消費するには至らなかったが,令和3年度にずれ込んだ計画の遂行を考えると,COVID-19による移動制限のため旅費使用額がやや減少している他は概ね当初計画通りの支出となっている。次年度使用額も令和3年度早期に解消される見込みである。
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