2020 Fiscal Year Research-status Report
中枢神経機能障害に着目した福山型筋ジストロフィーの治療法開発研究
Project/Area Number |
19K08346
|
Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
岡崎 哲也 鳥取大学, 医学部附属病院, 助教 (30465299)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
檜垣 克美 鳥取大学, 研究推進機構, 准教授 (90294321)
難波 栄二 鳥取大学, 研究推進機構, 教授 (40237631)
足立 香織 鳥取大学, 研究推進機構, 助教 (50609237)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 福山型筋ジストロフィー / fukutin / 知的障害 |
Outline of Annual Research Achievements |
福山型筋ジストロフィー(FCMD)では、筋症状だけでなく中枢神経症状である知的障害、大脳皮質形成異常が知られている。FCMD以外の大脳皮質形成異常を来す疾患では、細胞内シグナル伝達経路の一つ、mTOR経路の異常が病態に強く関与していることが分かってきている。FCMD同様に知的障害、大脳皮質形成異常を来す結節性硬化症では、合併する腎血管筋脂肪腫などに保険適応となっているmTOR阻害剤が、てんかんの症状にも効果があることが知られている。FCMDの皮質形成異常とmTOR経路の関係は不明だが、FCMD疾患モデルマウスの筋組織ではmTOR経路の障害が生じていると考えられ、mTOR阻害剤投与により、筋の組織学的改善を示したとの研究報告がある。FCMDの中枢神経障害にもmTOR経路異常が関与している可能性があり、本研究の目的は中枢神経症状へのmTOR経路異常の関与を解明し、治療法の開発に結びつけることである。本研究では疾患モデルヒト由来培養神経細胞を用いて、神経細胞におけるmTOR経路障害を同定し、筋組織同様にmTOR阻害剤の効果を明らかにすることである。本年度は、SH-SY5Y細胞のFKTN遺伝子をsiRNAでノックダウンする実験系の確立を行った。実験系の確立にあたり、siRNA、FKTN抗体の効果確認を免疫染色およびウェスタンブロット法を、SH-SY5Y細胞だけでなく、COS細胞、HeLa細胞も用いて繰り返し行った。今後、本年度確立した実験系を用いてmTOR経路の障害ならびに障害部位の同定、mTOR阻害剤の効果の確認を行う方針である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度はFKTN遺伝子をsiRNAでノックダウンしたSH-SY5Y細胞を用いる、本研究の根幹となる実験系の確立を行った。進捗がやや遅れている要因として、SH-SY5Y細胞を用いた実験のみでのsiRNAでのノックダウン効果の確認が一部難しく、COS細胞、HeLa細胞といった他系統の細胞も用いてsiRNA、複数のFKTN抗体の効果の確認を免疫染色、ウエスタンブロットを繰り返し実施し検討した。実験系の確立にあたり、発現ベクターを用いてFKTN発現を亢進させた細胞を使用した実験も実施した。今後、本年度確立した実験系を用いてmTOR経路の障害、ならびに障害部位の同定、mTOR阻害剤の効果の確認を行う方針である。
|
Strategy for Future Research Activity |
令和3年度は、これまでに確立したFCMD疾患モデル細胞を用いたmTOR経路異常の解明を行っていく。 a) SH-SY5Y細胞のfukutinをsiRNAでノックダウンした細胞を用いる。既知のmTOR経路に関与するタンパク発現を抗体を用いた免疫染色、ウエスタンブロット法、リアルタイムPCR等で確認し、mTOR異常ならびにその部位を明らかにする。はじめに筋組織で報告があるmTORシグナルの上流分子のAktに着目する。次に、mTORC1シグナル経路についても検討を行う。 (上記でmTOR経路の異常が認められない場合には、次世代シークエンサーを用いて網羅的なRNA発現解析を行い、mTOR経路以外の経路についても、コントロールと比較し、有意に発現が異なる遺伝子を探索する) b) 神経細胞形成異常の検討; 共焦点レーザー顕微鏡を用いて神経細胞の形態学的特徴を明らかにする。 c)上記で解明したmTOR経路異常等から、治療候補薬剤をリストアップする。fukutinのノックアウトマウスの筋組織では、mTORC1活性上昇があり、mTOR阻害剤であるラパマイシン投与で筋細胞の形態異常が改善したという報告がある。 d) FCMD疾患モデル細胞を用いて、治療候補薬投与による神経細胞形態の改善、mTOR経路異常等の改善を確認する。mTOR阻害剤の効果については、リン酸化mTORの発現量を指標に、ウエスタンブロット法により検討を行う。
|
Causes of Carryover |
今年度は前年度(2019年度)の未使用額からも支出を行った。概ね研究開始当初の計画通りの支出となっている。次年度は本研究の目的である、これまでに確立した実験系を用いてのmTOR経路障害の同定等を行うための物品購入や、国内外の学会参加費等が支出予定である。
|