2023 Fiscal Year Annual Research Report
ヒト化マウスによる胎生期HTLV-1感染モデルの構築と胎盤を介した感染機構の解明
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19K08357
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Research Institution | National Institute of Infectious Diseases |
Principal Investigator |
野島 清子 国立感染症研究所, 次世代生物学的製剤研究センター, 主任研究官 (60370970)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | HTLV-1 / 母子感染 / 経胎盤感染 / ヒト化マウス / クローン解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒトT細胞白血病ウイルス (HTLV-1) は輸血・母子・水平感染で感染するが、抗体スクリーニング導入や完全人工栄養への移行により新規感染者は減少した。その一方で,完全人工栄養乳に切り替えても,3-5%程度の感染が認められることから,経胎盤感染あるいは経産道感染の可能性が示唆されてきたが、より詳細は感染機序の解明に資するモデル動物の開発等が望まれていた。本研究では、まずこれらの問題を克服しHTLV-1母子感染モデルを構築することを目指した。 まず、妊娠12日目のNOGマウスにヒト末梢血を1x106-7細胞移植し妊娠ヒト化マウスを作成し, 3-4日後,マイトマイシンC処理したHTLV-1感染細胞(MT-2)を1x107細胞移植することで、感染妊娠マウスを作成した。出生後4週齢のマウスの感染状態を調べ、ほぼ全個体でHTLV-1ゲノムが検出され母子感染モデルの構築が可能となった。 そこで、妊娠17.5日目の胎仔と胎盤におけるウイルスゲノムの局在を調べたところ、約20%の胎盤、胎児肝臓で検出され、経胎盤感染が20%程度起こっていることが示唆された。また、非感染ヒト化妊娠マウスから出生した非感染仔マウスを感染母マウスに育児させると、40%程度仔マウスからウイルスゲノムが検出されることから、母乳経由でも感染細胞が移行していることが示唆された。 最後に妊娠母マウス血中の感染細胞と胎盤、胎仔肝臓のゲノムを用い、ウイルスの挿入部位に基づくクローン解析をした結果、全ての組織に共通するクローンは、極めて少ないものの存在し、また出生後の母乳を解析した結果、育児中の感染母マウスの血液中、母乳中、新生児マウスの肝臓中のゲノムにおいても共通したクローンの存在が明らかとなった。 これらの解析から、我々の構築した母子感染モデルは、部分的であるが、ヒトのHTLV-1の母子感染を模していることが明らかとなり、今後の治療薬開発に有用であることが示唆された。
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