2021 Fiscal Year Annual Research Report
RNAシーケンスによる大腸鋸歯状腺腫の発癌機構の解明と分子標的治療の基盤確立
Project/Area Number |
19K08367
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
太田 亮介 金沢大学, がん進展制御研究所, 研究協力員 (40767935)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
源 利成 金沢大学, がん進展制御研究所, 教授 (50239323)
澤田 武 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 研究員 (60345626)
山本 英一郎 札幌医科大学, 医学部, 訪問研究員 (60567915)
佐々木 泰史 札幌医科大学, 医療人育成センター, 教授 (70322328)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 大腸癌 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、遺伝子発現プロファイルの解析と融合遺伝子の探索により、大腸鋸歯状腺腫(traditional serrated adenoma, TSA)を前癌病変とする発癌経路の確立と、その分子機構の解明を行うことであった。しかし、発現解析に適した病変が十分得られなかったため、従来行っていた鋸歯状病変における遺伝子変異、メチル化、免疫組織化学の解析をさらに進めることとした。 具体的には、無茎性鋸歯状腺腫(sessile serrated adenoma, SSA)18病変、TSA 37病変を含む計78病変の鋸歯状病変を対象とした。まず、ホルマリン固定パラフィン包埋標本からDNAを抽出した。Wntシグナル経路関連の16遺伝子を含む計39遺伝子をパネル化し、次世代シーケンスで全エクソンの変異解析を行った。また、ゲノムワイドなメチル化であるCpG island methylator phenotype(CIMP)のマーカー遺伝子、MLH1, CDKN2A, SMOC1を含む癌関連遺伝子のメチル化解析をパイロシーケンス法で行った。さらに、Wntシグナル経路の亢進を確認するため、39鋸歯状病変(SSA 13 病変、TSA 14病変、過形成性ポリープ 12病変)を対象に、免疫組織化学でβ-カテニン蛋白の発現を評価した。 結果、Wntシグナル関連遺伝子変異とβ-カテニンの核内集積はTSAに高頻度であり、TSAの発生におけるWntシグナル経路の重要性が確認された。SMOC1遺伝子メチル化はSSAにみられず、TSAにのみ観察されたことと合わせ、TSAはSSAとは異なる発癌経路に属しているものと考えられた。また、TSAをKRAS変異陽性病変、BRAF変異陽性病変に分けると、RNF43変異頻度、SMOC1メチル化頻度は両者で異なっており、TSAを介した発癌経路が複数存在することが示唆された。
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