2020 Fiscal Year Research-status Report
The development of NASH-HCC prevention targeting EGFR
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19K08377
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Research Institution | Kyoto Prefectural University of Medicine |
Principal Investigator |
楳村 敦詩 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (30759585)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | EGFR / 肝発癌 / 慢性肝障害 / HCC / Glucocorticoid receptor / ERRFI1 / MIG6 / NASH |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒト肝癌に見られるEGFR変異は低頻度であることから、EGFRを高発現する肝癌の多くは変異以外のEGFR活性化機構を獲得していると想定される。METと共にEGFRは慢性肝障害で活性化し、いずれかのシグナルを抑制すると肝再生不良となることが報告されており、背景肝におけるEGFR の役割に注目した。EGFR シグナルは慢性肝障害で高率に活性化し、発癌イニシエーションに関与すると推定されることから、EGFRをターゲットとした肝癌予防法を探索することにした。まず、ホノキオールという木蓮から抽出され、漢方薬で使用されるコウボクの主成分が抗癌作用を持つと報告されていることに着目した。自然発癌するNASH肝癌マウスに対しホノキオールを投与したところ、著明な発癌抑制効果を認めた。 本年度は① In vitroの実験でホノキオールが、Glucocoroticoid Receptor(GR)-MIG6を介したEGFRの分解系を促進しEGFRシグナルを抑制するメカニズムを示した。 ② NASH背景肝サンプルの解析では、進行例でEGFR分解を制御するMIG6をコードするERRFI1遺伝子の発現が低下すること、マウス肝臓ではホノキオール投与によりEGFR蛋白量が低下することを見出した。 ③ ヒト肝癌および周囲非癌部サンプルでEGFRの発現とERRFI1遺伝子の発現が逆相関することを示していたが、さらにGRがERRFI1の発現と正の相関を示した。 以上より、NASH進行例および肝癌症例ではGR-MIG6の低下によりEGFRシグナルが促進し発癌リスクが上昇している可能性、実験系からはホノキオール投与によりGR-MIG6が活性化しEGFRを抑制できる可能性、について示すことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
設定した目標について、EGFRの分解に関わるMIG6分子をコードするERRFI1遺伝子の発現が上昇していることを端緒にホノキオール投与によりこの分解系がどのように発動され、EGFR発現が変化していくのかを、経時的な評価を念頭に解析を進めた。遺伝子・分子の発現について24-48時間のアッセイではダイナミックな変化を認めなかった。そこで、ホノキオール投与3時間以内の早期にGRの核移行ならびにERRFI1の遺伝子発現が誘導されていることが判明した。 さらにマウス肝癌およびNASH背景肝サンプルを用い、予定通りの検討を行ったところ、前述のとおりNASH進行例および肝癌症例ではGR-MIG6の低下によりEGFRシグナルが促進し発癌リスクが上昇している可能性、実験系からはホノキオール投与によりGR-MIG6が活性化しEGFRを抑制できる可能性、について示すことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度、一定の結果がまとまり論文化することができた。今後はヒト検体での解析を中心にすすめ、予後や臨床データとの関連をより詳細に検討する。基盤データを明らかとしたのちには、すでに漢方薬の一部に含まれている成分ホノキオールを、慢性肝疾患患者および肝癌再発リスクの高い患者を対象に投与し、その予防効果を検討する臨床研究を準備する。 令和3年度は、データ解析に加えて症例集積に向けての準備を行い、臨床研究の開始を目標とする。
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