2019 Fiscal Year Research-status Report
治療最適化を目指した潰瘍性大腸炎患者の腸内細菌・口腔内細菌叢の解析
Project/Area Number |
19K08381
|
Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
長沼 誠 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 准教授 (00265810)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 潰瘍性大腸炎 / 5-ASA製剤不耐 / 腸内細菌叢 |
Outline of Annual Research Achievements |
難治性炎症性疾患である潰瘍性大腸炎(UC)の病因・病態に腸内細菌叢の乱れが関与していることが報告されているが、UC患者の予後、特に治療経過に影響を及ぼす薬剤不耐との関連性を詳細に検討した研究はない。本研究では、1)実臨床の問題点を解決するための治療抵抗例および薬剤不耐の根本的原因を腸内細菌叢の観点から解明するとともに、2)腸内細菌叢とUCの長期予後に与える因子を明らかにし、腸内細菌叢の改変によってUC患者の予後を改善するための治療戦略の確立を目的として研究を行なっている。 2019年度はUCの基本治療薬である5-ASA製剤が副作用で使用することができない5-ASA不耐例と腸内細菌叢の関係の検討を行うために5-ASA不耐例と非不耐例との間で糞便中の腸内細菌叢に差異があるかについて検討した。コホート患者のうち7.4%が5-ASA不耐性グループ、92.5%が5-ASA非耐性グループに該当し、5-ASA耐性グループは、5-ASA耐性グループよりも、フェカリバクテリウム属、連鎖球菌、およびクロストリジウム属の細菌の量が多かった(P<0.05)。以上より腸内細菌叢の相違により、5-ASA不耐症例が存在し、予後不良となる可能性があること、また5-ASAで副作用が生じる例は細菌治療の最適化により、UC患者の予後を改善する可能性が示唆された(Mizuno S, Naganuma M et al Intest Res 2020; 8(1):69-78)。 2020年度はUC患者における唾液内の腸内細菌叢の特徴、および寛解症例と頻回再燃症例における腸内細菌叢の相違について検討する予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、1))既存治療抵抗・長期寛解維持被験者に特異的な腸内細菌叢・口腔内細菌叢および代謝産物の同定、2)UCの基本治療薬である5-ASA製剤不耐の細菌学的機序の解明、3)細菌叢パターンによる予後予測因子の同定を行うことが目的であるが、本年度は2)について成果を上げることができ、論文掲載することができている点より概ね順調に進展していると考えた。
|
Strategy for Future Research Activity |
現在UCの治療法である免疫抑制剤、抗TNFα抗体製剤抵抗例、直近2年以上寛解例の便・唾液検体を採取終了している。今後DNA抽出、16S rRNA-sequencing法による細菌叢解析を行い、16S rRNA解析より得られた細菌叢プロファイルをもとに、被験者ごとの腸内細菌叢および口腔内細菌叢のパターンを解析する。治療抵抗例・長期寛解維持に関わる口腔内および腸内細菌群の同定の試みを行うとともに、上記解析で有意差を認めた場合にメタゲノム解析を追加することにより、さらなる菌種の絞り込みにつなげることを目標とする。また腸内細菌叢の変化により、短鎖脂肪酸に代表される代謝産物の変化が誘導され、それらの代謝産物の変化が寛解維持や難治化に寄与すると考えられることより、治療抵抗・寛解維持の成否に関わる細菌群の関与する糞便代謝産物の変化を、メタボローム解析にて検討する。
|