2020 Fiscal Year Research-status Report
プロバイオティクス摂取が腸管免疫と腸内細菌のトランスジェネレーションへ及ぼす影響
Project/Area Number |
19K08384
|
Research Institution | National Defense Medical College |
Principal Investigator |
岡田 義清 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究施設、病院並びに防衛, 内科学, 助教 (90531137)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 伝統的発酵食品 / プロバイオティクス / トランスジェネレーション / 樹状細胞 / 制御性T細胞 / 腸内細菌 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、「胎児期における環境要因が何らかの形で記憶され、出生後のさまざまな疾患の罹患率に影響を与える可能性」、すなわちトランスジェネレーションが注目され、それを裏付けるデータが蓄積しつつある。しかしながら、多種多様な有用微生物(プロバイオティクス)を含有する伝統的発酵食品を摂取する食生活が、トランスジェネレーションへいかなる影響を及ぼすかは不明である。 令和元年度においては、日本の伝統的発酵食品であるふなずしより単離したプロバイオティクス株を親マウスに経口投与し、その親から得られた仔マウスの腸間膜リンパ節(MLNs)におけるCD103陽性樹状細胞数を検討した。その結果、プロバイオティクスおよび環境細菌群を投与した親マウスでは、対照群に比しCD103陽性樹状細胞数が優位に増加していた。各群の親子間で比較検討した結果、プロバイオティクス投与の親とその仔では、CD103陽性樹状細胞数は同等であり統計的有意差は認められなかった。 令和2年度においては、日本の伝統的発酵食品であるふなずしより単離したプロバイオティクス株を親マウスに経口投与し、その親から得られた仔マウスの腸間膜リンパ節(MLNs)における制御性T細胞数を検討した。また、非プロバイオティクス細菌として土壌より抽出した環境細菌群を投与し、プロバイオティクス投与群との比較を行った。 その結果、プロバイオティクスおよび環境細菌群を投与した親マウスでは、対照群に比し制御性T細胞数が優位に増加していた。その一方で、仔マウス間においてはプロバイオティクス投与の親から得られた仔マウスのみが、対照群に比し制御性T細胞数の優位な増加が認められた。 各群の親子間で比較検討した結果、プロバイオティクス投与と環境細菌群投与の親とその仔では、仔マウスにおける制御性T細胞数が親マウスに比し有意に減少していた。。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、日本の伝統的発酵食品であるふなずしより単離したプロバイオティクス株を親マウスに経口投与し、その親から得られた仔マウスの腸間膜リンパ節(MLNs)における制御性T細胞を検討した。これにより、プロバイオティクスを含有する伝統的発酵食品を摂取する食生活によって惹起された恒常性維持あるいは抗炎症作用に深く関与する制御性T細胞の変化が、その仔にも影響をおよぼす可能性が示唆された。 以上のデータは、伝統的発酵食品より単離されたプロバイオティクス投与によって影響を受けると考えられる親の腸管免疫系細胞が、次世代の子供たちへいかなる影響をおよぼすか(トランスジェネレーション)の解明に向けて、順調な進捗を示している。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度の結果より、恒常性維持あるいは抗炎症作用に深く関与する制御性T細胞は、親マウスにプロバイオティクスまたは環境細菌を投与することで増加する可能性が示された。今後は、腸内細菌の変化(多様性および門レベルあるいは属レベルの変化)を親マウスおいて検討し、さらにその親マウスから得られた仔マウスにおいても腸内細菌の変化を調べてトランスジェネレーションを考察する予定である。
|
Causes of Carryover |
試薬などの使用数が減少したため次年度使用額が生じた。引き続き、試薬、実験動物(マウス)の購入および飼育費などを中心に使用する予定である。
|