2020 Fiscal Year Research-status Report
Molecular analysis in the malignant progression of IPMN
Project/Area Number |
19K08387
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
多田 稔 東京大学, 医学部附属病院, 届出研究員 (80302719)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
立石 敬介 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (20396948)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 膵癌 |
Outline of Annual Research Achievements |
充実性腫瘍である通常型膵管癌は膵上皮内腫瘍性病変(pancreatic intraepithelial neoplasia: PanIN)からの多段階的発癌モデルが提唱されているが、一方で嚢胞性腫瘍であるIPMNから発生する膵癌も存在する。我々はIPMNが年率0.6%と一般の20倍と高い発癌リスクを有する膵癌高危険群であることを報告した(Clin Gastroenterol Hepatol, 2006;4(10):1265-70)。そのIPMNに関連する膵発癌様式には2通りあり、IPMN上皮が局所で悪性転化し浸潤癌化するIPMN由来浸潤癌と、IPMNとは別の場所の膵内に通常型膵癌と同様の浸潤癌を形成するIPMN併存膵癌である(Pancreas, 2011;40(4):571-80)。重要なことに、IPMN由来浸潤癌と併存膵癌における発癌の分子機序や生物学的相違点に関しては未だ殆ど不明である。またIPMN併存膵癌が、いわゆる通常型膵管癌と同一の発癌形態であるのかどうかも明らかではない。通常型膵管癌にはKRAS, CDKN2A, TP53, SMAD4の”Big4”と呼ばれる遺伝子変異が高頻度に存在するが、一方IPMNでは特異的な遺伝子異常GNAS変異が45-65%に存在する。これはIPMNが通常型膵癌とは異なる分子学的背景を持つことを示唆している。エピゲノムとは、DNAの配列変化を伴わずに遺伝子転写を制御するDNAメチル化やヒストン修飾の総称である。本研究では、IPMNに関連する2通りの膵発癌様式の比較において、両者にとって重要でありかつ、各々を層別化しうるエピゲノム制御プロファイルを明らかにする.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
IPMNの経過観察中に膵発癌を認めた20症例の組織標本を用いて、これまでに免疫染色によるグローバルレベルでのDNAメチル化の比較を行った。またIPMN部分や浸潤癌部をレーザーマイクロダイセクションにより選択的に抽出し、各々からDNAおよびRNA抽出を行った。免疫染色ではIPMNを組織別に low grade, high grade, 浸潤癌化病変の3群に分類し、シグナルの頻度と強度に応じスコア化した。RNAレベルでのエピゲノム制御関連遺伝子の発現についてもIPMN low gradeと、high gradeまたは浸潤癌化病変の2群間で定量的RT-PCRで比較した。DNAメチル化の指標である5-メチルシトシン(5-mC)のレベルは IPMNの悪性化に伴い有意に低下した。またメチル化DNAの脱メチル化中間産物である5-ヒドロキシメチルシトシン(5-hmC)についても有意な低下を認めた。なお重要なことに、この傾向は、IPMN由来浸潤癌とIPMN併存膵癌のいずれでも認められたことから、いずれもエピゲノム修飾が関与する可能性を裏付けた。さらにIPMNとIPMN由来浸潤癌とIPMN併存膵癌のそれぞれにおいて遺伝子発現解析を行い、エピゲノムプロファイルとの比較解析を行っており、順調にデータが得られている。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後の研究においては、IPMNとIPMN由来浸潤癌とIPMN併存膵癌の遺伝子変異などゲノム解析、遺伝子発現、エピゲノム解析の結果を統合し、各々の相違点を明らかにすることで、各々の発がん経路の特性を探索しまたその相違点の分子学的背景を明らかにする。本研究により各々のIPMN発癌機序に重要なエピゲノム修飾が明らかになれば、特異的なエピゲノムを基にした診断・治療法にもつながる創造性も有すると期待される。また化学療法への感受性についても個々の腫瘍の特性が関与するかどうかを検証していく。
|
Research Products
(2 results)