2019 Fiscal Year Research-status Report
ヒトiPS細胞由来肝星細胞を用いた肝線維化・発癌機序の解明
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19K08415
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
中川 美奈 東京医科歯科大学, 統合教育機構, 准教授 (30401342)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
柿沼 晴 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 寄附講座准教授 (30372444)
朝比奈 靖浩 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 寄附講座教授 (00422692)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ヒトiPS細胞 / 肝星細胞 / M2BPGi / 肝細胞癌 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究代表者らはこれまでに、研究グループで独自に構築した2000例以上の前向きコホートデータを用いた多施設共同研究により、C型肝炎に対する抗ウイルス治療として、インターフェロン(IFN)を用いた治療と、現在主に用いられているIFNを用いない直接型抗ウイルス薬(DAA)を用いた治療とを比較し、早期発癌抑止効果について両治療群で有意差のないこと、発癌予測マーカーとしてM2BPGiが有用であることを報告してきた(Nakagawa et al. J Hepatol, 2017)。本研究では肝線維化と肝星細胞の活性化機構に着目し、基礎研究と臨床研究の両面からアプローチすることで、未だ充分明らかにはなっていない、C型肝炎ウイルス駆除後の肝発癌機構の解明、M2BPGiの機能的意義の解析を目指すものである。 基礎研究では、ヒトiPS細胞由来肝間葉系細胞(星細胞)の分化誘導法を確立(Miyoshi et al, 2019)したとともに、本細胞を肝細胞系譜細胞と共培養して、その形質変化を確認した。本細胞と肝細胞系譜細胞を共培養すると培養上清中のM2BPGiの濃度が上昇することが示され、その機能的意義と分子機構を解析中である。 臨床研究では前向きコホートをもとにした多施設共同研究をさらに拡大し、抗ウイルス治療後の発癌および生命予後の解析を行い、IFN治療群とDAA治療群とを比較した。観察期間中央値はDAA治療群2.3年、IFN治療群6.0年である。性別、年齢、Fib-4 indexを用いたPropensity scoreによって背景因子をそろえてIFNの有無によるSVR後累積発癌率、生存率を解析したところ、肝癌既往の有無にかかわらず有意差を認めなかった。慢性炎症に伴う肝線維化機構の解明、肝発癌制御に向けた個別化医療の発展のため、本研究を継続中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、以下のステップで進めることを計画している。(1)ヒトiPS細胞由来肝間葉系細胞(星細胞)の分化誘導法の確立と標的遺伝子の修飾による肝間葉系細胞誘導の効率化、(2)iPS由来間葉系細胞を用いたin vitro解析による糖鎖マーカーM2BPGiの生体内における分子生物学的意義について、(3)糖鎖マーカーM2BPGiの動態と臨床的意義、の3つである。 上記はすべて東京医科歯科大学消化器内科教室、および肝臓病態制御学講座研究室で行っており、研究施設・設備など、研究環境は整備が完了し、一連の研究は順調に進み、発表論文、学会発表も概ね予定通り進展している。 (1)ヒトiPS細胞由来肝間葉系細胞(星細胞)の分化誘導法の確立と標的遺伝子の修飾による肝間葉系細胞誘導の効率化に関しては、標的遺伝子数種類を修飾するヒトiPS細胞の樹立に既に着手し、いくつかを樹立した。転写因子LHX2に関しては、強制発現によってヒトiPS細胞由来肝間葉系細胞におけるLamininなどの細胞外マトリックスの発現を変化させ、共培養するヒトiPS細胞由来肝細胞系譜細胞のアルブミン産生能を亢進せしめることが示された。他の候補分子に関しても現在検証解析を進めている。 (2)iPS由来間葉系細胞を用いたin vitro解析による糖鎖マーカーM2BPGiの生体内における分子生物学的意義については、ヒトiPS細胞由来肝間葉系細胞とヒトiPS細胞由来肝細胞系譜細胞との共培養系でM2BPGiの産生レベルが亢進することが確認され、その機序について検討を進めている。 (3)糖鎖マーカーM2BPGiの動態と臨床的意義についても、新規データ解析を行い、これに基づく新たな知見を得たので、その内容について論文を作成中である。
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Strategy for Future Research Activity |
前記の如く、当初の計画で企図したように順調に進捗していることから、今年度の計画をそのまま進展させる予定である。 (1)ヒトiPS細胞由来肝間葉系細胞(星細胞)の分化誘導法の確立と標的遺伝子の修飾による肝間葉系細胞誘導の効率化については、解析中のいくつかの分子について、並行してヒト肝星細胞株を用いて同様の検証を行うことで、細胞株との形質の差異を明らかにし、whole transcriptome解析とcytokine array解析より変動分子を抽出、shRNA発現あるいは阻害剤添加により分子生物学的手法から検証実験を行う予定である。 (2)iPS由来間葉系細胞を用いたin vitro解析による糖鎖マーカーM2BPGiの生体内における分子生物学的意義については、M2BPGiの産生調節機構に関して、さらに分子生物学的な解析を進める予定である。 (3)糖鎖マーカーM2BPGiの動態と臨床的意義についても、新たな知見を得たので、その結果を継続して集積し、解析を進める予定である。 これらを通じて、未だ充分明らかになっていないウイルス駆除後の肝発癌機構の解明、M2BPGiの機能的意義を明らかにするため、間葉系細胞の分化誘導法の改良を並行して行い、得られた間葉系細胞(星細胞)モデルを用いて活性化の有無による線維化や癌関連マーカー、M2BPGiの動態解析を行う予定である。本研究を推進することで、慢性炎症に伴う線維化機構の解明、肝発癌制御に向けた個別化医療の発展に貢献できると期待している。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由: 試薬等が計画当初より廉価で購入可能であったため、廉価な物品を選択して購入したため。 使用計画:検討する数・種類を拡大して解析を発展させて行うため、当初の計画よりも試薬を増量して購入する予定である。
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Research Products
(13 results)
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[Journal Article] Vasoactive Intestinal Peptide Derived From Liver Mesenchymal Cells Mediates Tight Junction Assembly in Mouse Intrahepatic Bile Ducts2020
Author(s)
Sato A, Kakinuma S, Miyoshi M, Kamiya A, Tsunoda T, Kaneko S, Tsuchiya J, Shimizu T, Takeichi E, Nitta S, Kawai-Kitahata F, Murakawa M, Itsui Y, Nakagawa M, Azuma S, Koshikawa N, Seiki S, Nakauchi H, Asahina Y, Watanabe M
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Journal Title
Hepatology Communications
Volume: 4
Pages: 235~254
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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[Journal Article] Comprehensive genetic analysis of cholangiolocellular carcinoma with a coexistent hepatocellular carcinoma‐like area and metachronous hepatocellular carcinoma2019
Author(s)
Kawai-Kitahata F, Asahina Y, Kaneko S, Tsuchiya J, Sato A, Miyoshi M, Tsunoda T, Inoue-Shinomiya E, Murakawa M, Nitta S, Itsui Y, Nakagawa M, Azuma S, Kakinuma S, Tanabe M, Sugawara E, Takemoto A, Ojima H, Sakamoto M, Muraoka M, Takano S, Maekawa S, Enomoto N and Watanabe M
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Journal Title
Hepatology Research
Volume: 49
Pages: 1466~1474
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Loss of fibrocystin promotes interleukin-8-dependent proliferation and CTGF production of biliary epithelium2019
Author(s)
Tsunoda T, Kakinuma S, Miyoshi M, Kamiya A, Kaneko S, Sato A, Tsuchiya J, Nitta S, Kawai-Kitahata F, Murakawa M, Itsui Y, Nakagawa M, Azuma S, Sogo T, Komatsu H, Mukouchi R, Inui A, Fujisawa T, Nakauchi H, Asahina Y, Watanabe M
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Journal Title
Journal of Hepatology
Volume: 71
Pages: 143~152
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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