2019 Fiscal Year Research-status Report
Development of a new treatment targeting RIP2 in inflammatory bowel diseases
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19K08455
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
渡邉 智裕 近畿大学, 医学部, 准教授 (40444468)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
工藤 正俊 近畿大学, 医学部, 教授 (10298953)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | RIP2 / 炎症性腸疾患 / 自然免疫 |
Outline of Annual Research Achievements |
自然免疫反応のシグナル伝達分子であるReceptor-interacting protein 2 (RIP2)の活性化が炎症性腸疾患の病態にどのように関わるのかという課題について、炎症性腸疾患患者の臨床検体とマウスの実験腸炎モデルを用いて、解析を進めた。その結果、以下の結果を見出した。 1)RIP2とその関連分子(cIAP2, TRAF6, TAK1)の発現が炎症性腸疾患患者の腸管組織で上昇しており、これらの分子の発現と炎症性サイトカイン(TNF-alpha, IL-6)の発現に相関を認めた。 2)cIAP2-RIP2あるいはRIP2-TAK1間の分子結合の強度が炎症性腸疾患の病態と関連し、RIP2の活性化が炎症性腸疾患の活動性をよく反映することが判明した。さらに、RIP2の発現が炎症性サイトカインの産生レベルと相関することが免疫染色においても明らかになった。 3) DSSあるいはTNBS腸炎モデルにおいて、RIP2の発現低下をsiRNA投与により試みたところ、RIP2の機能低下により実験腸炎の発症抑制が観察された。その効果は腸管組織における炎症性サイトカインの産生抑制を伴っていた。 4) 3)の結果は、NOD1/NOD2の2重欠損マウスにおいても再現された。このことから、NOD1あるいはNOD2とは無関係に活性化されるRIP2が腸炎を誘導することが明らかになった。 以上の結果から、NOD1あるいはNOD2に依存しないRIP2の活性化が炎症性腸疾患の病態と深く関与することが明らかになった。また、RIP2の発現は炎症性サイトカインの産生を規定する因子の一つであることも判明し、RIP2が炎症性腸疾患における新規治療標的として有望である可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
炎症性腸疾患の腸管粘膜におけるRIP2とRIP2関連シグナル伝達分子の発現を確認することができた。さらに、RIP2シグナル伝達経路の活性化が炎症性腸疾患の疾患活動性やサイトカインの産生に関わることを見出した。また、動物実験のレベルではDSSあるいはTNBS腸炎の発症がRIP2の活性化を基盤に生じることも明らかにすることができた。予想外にも、NOD1あるいはNOD2に依存しないRIP2の活性化が実験腸炎の発症を誘導することがNOD1/NOD2 2重欠損マウスを用いた検討から判明した。このように、本研究では炎症性腸疾患の発症に関わる病原因子の一つとして、RIP2の活性化が存在することを明らかにすることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
RIP2の活性化と炎症性腸疾患の病態の関係の一端を明らかにすることができた。RIP2の活性化が炎症性腸疾患の病態に果たす役割を解明するために、クローン病疾患感受性遺伝子ATG16L1がRIP2の活性化にどのように関わっているのか?という課題の解明をすすめる。ATG16L1の機能不全が炎症性腸疾患の発症と強く関わるが、ATG16L1とRIP2との関係は未解明である。また、RIP2の活性化が炎症性腸疾患患者の中で、どのようなタイプの患者層と関わっているのかについては明らかではない。今後も基礎研究と臨床研究の双方を促進し、炎症性腸疾患の病態をRIP2の活性化という視点から解析を続ける予定である。
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Research Products
(4 results)