2019 Fiscal Year Research-status Report
ヒトiPS細胞由来胆管細胞培養系を用いた胆管癌における新規発癌機序の解明
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19K08461
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
小林 正典 東京医科歯科大学, 医学部附属病院, 特任助教 (10825459)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
柿沼 晴 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 寄附講座准教授 (30372444)
土屋 輝一郎 東京医科歯科大学, 医学部附属病院, 准教授 (40376786)
大島 茂 東京医科歯科大学, 医学部附属病院, 講師 (50376787)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ヒトiPS細胞 / 胆管癌 / 疾患モデル / 胆管上皮細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究代表者らは、健常者由来ヒトiPS細胞からヒトiPS細胞由来胆管細胞オルガノイドの樹立に成功している。この技術を基盤として、本研究では胆管癌患者、健常者の胆汁検体を採取し、ヒトiPS細胞由来胆管上皮オルガノイドとの共培養系を新規に樹立することで、1)胆汁によってヒト胆管上皮に惹起される細胞内シグナルの差異、2)胆汁内含有物の長期暴露による癌形質獲得の有無、3)胆汁中の発癌物質の同定、を中心課題として胆汁暴露から胆管上皮内部で起きる細胞生理学的な変化と発癌までの病態とを明らかにし、発癌物質を同定することを目的として研究を行い、今年度の成果として下記の成果を得た。 最初に前述の胆管癌患者および健常者に由来する胆汁検体を採取するため、当該施設倫理審査委員会での承認(M2019-069)を得た後、2019年度内に13症例から同意を得て、健常者8例、肝門部胆管癌患者 5例の胆汁を採取した。次に、得られた胆汁とヒトiPS細胞由来胆管上皮オルガノイドとの共培養系を新規に樹立するため、条件検討に着手した。高濃度に胆汁を添加すると細胞死が誘導される一方で、一定の濃度で添加した場合は、CCNE1など細胞周期関連分子の発現亢進がみられるなど、いくつかの形質変化を認めており、今後も条件検討を進めつつ、1,2-DCPの反応性代謝産物を添加する検討も並行して進める予定である。さらに派生する研究として、ヒトiPS細胞由来胆管上皮オルガノイドに神経伝達物質であるVasoactive intestinal peptide(VIP)を添加すると、Tight junction形成の誘導を介して胆管細胞系譜としての成熟化が誘導されることが示され、これを報告した(Hepatol Commun, 2020)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究方法として、当初の計画では(1)胆汁採取、(2)ヒトiPS細胞由来胆管上皮オルガノイドと胆汁との共培養系の樹立、(3)胆管上皮細胞に起こり得る細胞生理学的変化の解析、(4)胆汁中発癌物質の網羅的解析、(5)胆汁中発癌物質の摂取経路の特定、の5つのステップにわけて立案していた。このうち今年度は(3)までを行う予定であったが、予定通りの進捗をみせている。 (1)胆汁採取、(2)ヒトiPS細胞由来胆管細胞オルガノイドと胆汁との共培養系の樹立について、予定していた患者からの検体採取も順調に進行し、既に10例以上の検体が入手できている。そしてこれをもちいた培養条件の検討を行い、前記のようなpreliminary dataを得る事ができており、次年度はさらに進展できることが予測される。(3)胆管上皮細胞に起こり得る細胞生理学的変化の解析についても、既に条件検討が進んで解析に移っている。その中で派生した検討として、当研究室で胆管上皮細胞の形質に影響を与えることを見いだした神経伝達物質Vasoactive intestinal peptide(VIP)に関する機能解析を行った。神経伝達物質による胆管上皮細胞の機能調節は近年注目を集めているが、我々は独自の解析系からVIPの重要性に着目し、検討した結果、主に門脈周囲の間葉系細胞(Portal Fibroblasts)からVIPが産生され、胆汁うっ滞性肝障害からの回復期に、VIPは胆管上皮細胞でのTight junction形成を誘導することで障害の軽減に寄与することが示された。本結果は米国肝臓病学会の機関誌Hepatology Communicationsに採択掲載され、高い評価を受けている。 このように順調に計画が進行しており、次年度も計画の通りに進行させる予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
いずれの項目に関しても、今年度の成果に基づいて、研究を進捗させてゆく予定である。 前述の(1)胆汁採取、(2)ヒトiPS細胞由来胆管上皮オルガノイドと胆汁との共培養系の樹立、(3)胆管上皮細胞に起こり得る細胞生理学的変化の解析、の各段階については、今年度と同様に進めることを計画している。(1)についてはとくに肝門部胆管癌患者において、今後も症例数を増やして検討することで、次に述べる4の解析にも応用する予定である。(2)と(3)については、条件検討を行いつつ、1次胆汁酸、2次胆汁酸の各成分を添加した際と胆汁そのものを添加した際の比較検討、健常者胆汁と肝門部胆管癌患者胆汁の比較検討を中心に進めて行く予定である。さらに、上記の解析手法で十分な結果が得られなかった場合も想定し、ゲノム編集によって癌関連遺伝子を修飾したヒトiPS細胞を樹立し、これに胆汁酸あるいは胆汁を添加した際の反応性を検討することで、何らかの知見をえる方法も検討中である。そして、いずれかの手法によって、胆管上皮オルガノイドでの形質が認められれば増殖能、細胞死の評価,既知のIL-33などを含む炎症性サイトカインの産生、LPSによる炎症刺激を加えた際の刺激応答能の評価,共培養によるアポトーシス,ネクロプトーシスの評価について、分子生物学的手法を用いて詳細に解析する予定である。 次年度はさらに(4)胆汁中発癌物質の網羅的解析、に関しても進行させる予定である。前述のように肝門部胆管癌患者と健常者の胆汁を集積し、高速液体クロマトグラフィーによる分離と質量分析による各胆汁成分を網羅的に分析・解析を行う。これらを通じて、さらに3年目に(5)胆汁中発癌物質の摂取経路の特定の段階へ進むための研究を進めて行く予定である。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由: 試薬等が計画当初より廉価で購入可能であったため、廉価な物品を選択して購入したため。 使用計画:検討する数・種類を拡大して解析を発展させて行うため、当初の計画よりも試薬を増量して購入する予定である。
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[Journal Article] Vasoactive Intestinal Peptide Derived From Liver Mesenchymal Cells Mediates Tight Junction Assembly in Mouse Intrahepatic Bile Ducts2020
Author(s)
Sato A, Kakinuma S, Miyoshi M, Kamiya A, Tsunoda T, Kaneko S, Tsuchiya J, Shimizu T, Takeichi T, Nitta S, Kawai-Kitahata F, Murakawa M, Itsui Y, Nakagawa M, Azuma S, Koshikawa N, Seiki M, Nakauchi H, Asahina Y, Watanabe M.
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Journal Title
Hepatology Communications
Volume: 4
Pages: 235~254
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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[Journal Article] Comprehensive genetic analysis of cholangiolocellular carcinoma with a coexistent hepatocellular carcinoma‐like area and metachronous hepatocellular carcinoma2019
Author(s)
Kawai-Kitahata F, Asahina Y, Kaneko S, Tsuchiya J, Sato A, Miyoshi M, Tsunoda T, Inoue-Shinomiya E, Murakawa M, Nitta S, Itsui Y, Nakagawa M, Azuma S, Kakinuma S, Tanabe M, Sugawara E, Takemoto A, Ojima H, Sakamoto M, Muraoka M, Takano S, Maekawa S, Enomoto E, Watanabe M.
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Journal Title
Hepatology Research
Volume: 49
Pages: 1466~1474
DOI
Peer Reviewed
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